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2005/12/12

ゼロならではの奇天烈さを久々に満喫 『ゼロ THE MAN OF THE CREATION(54)』 原作:愛英史,漫画:里見桂 / 集英社(ジャンプ・コミックス デラックス)

8171【一杯のカレーライスに全財産を遣う覚悟があるのだな】

 54冊345話もあると,さすがに出来のよい1冊,そうでもない1冊がある。「神の手」を持つ究極の贋作者『ゼロ』のことだ。

 今回は,とてもよかった。

 怠惰と笑われそうだが,帯の内容紹介をそのまま転記させていただきたい。

   ◆大空に散った小説家の死の真相
   ◆黒田清輝の隠された真実を暴く
   ◆ドル札偽造団を欺く脅威のトリック
   ◆伝説の日本人女優の知られざる想いとは!?
   ◆究極のカレーに必要な幻の香辛料に迫る
   ◆ゼロの代理人を名乗る男の陰謀

 これら収録作はいずれもよくできている。読んでいてどこかが踊る。
 サン・テグジュペリの最後の飛行の謎と,書かれなかった次回作を,破り去られたノートの1ページを復刻する試み(ゼロはそのために廃棄された戦闘機P38ライトニングを修復させ,サン・テグジュペリと同じコースを飛ぶ!)から推理してみせる第1作。
 偽ドル「スーパーZ」の,さらに偽物を制作するという設定も絶妙なら,ブラウン神父ばりの逆説的な解決も見事な第3作。
 どこが贋作? と素朴な疑問はさておき,ゼロがコック姿で究極のカレーを供応する第5話(カレーひと鍋,しめて21億7千万円!)。
 黒田清輝,ロダン,トマス・ビューイックらの贋作に挑む他の収録作,いずれもひねりがきいて着地も乱れない。手馴れた描き方はワンパターン,ストーリーは陳腐な人情話にすぎないのだが,新たな素材を見出す努力がマンネリズムを感じさせない。

 もともとコマ内の文字数が異様に多い作品だが,テーマがうまく咀嚼できず,ゼロが提示するアイデアのインパクトが弱いとき,説明に要してさらに文字が増える傾向がある。
 今回の1冊は,プロットが視覚的で,かつサプライズを味わえるものが多かった。作品に占めるマンガ度(?)が高いとき,比例して『ゼロ』の品質もまた高まるのである。

 もちろん,贋作の下地にはX線で調べるまで存在も知られてなかった下絵を描き込むし,展示品の鼎をガラスのこちら側から一望しただけで専門家も検証できない贋作を製作できてしまうゼロのことである,その存在,能力の実現性に厳密を持ち出したらこの作品は楽しめない。
 ゼロが呼ばれる(まきこまれる)にいたるシチュエーション,それに対するゼロのアクロバティックな回答を,美術や料理(笑)の薀蓄を薬味にまったり楽しむのが正しい鑑賞法だろう。

 それにしても,54巻にいたってこの余力。(作者には申し訳ないが)うかつにアニメ化されたり浮かれブームに乗ったりしないで,このまま地味に100巻を目指してほしい。

   「承知した────ッ」

 や,でも,21億は払えませんが。

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