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2005/12/31

心の中で読み 心の耳で聞け 『ドラゴン桜(11)』 三田紀房 / 講談社モーニングKC

301【いいか矢島… 本当の自由とは… 自分のルールで生きるってことなんだよ】

 応援してしまう。作品も,登場人物も。

 ダメダメだった主人公がある日「師(マスター)」と出会ってふっと目覚め,七転八倒七転び八起き,やがて大きな目標目がけて一大奮起する。ババババーン! ……従来は野球(甲子園)やボクシング(チャンピオン)などを素材にしてきた,マンガメディア得意のストロングスタイルである。
 そこに「東大入試」をもってきた『ドラゴン桜』は偉い。

 ドラマ化だとかこの教育手法を取り入れた高校が現れたとか今年の東大受験者数が2割増しだとか,リアル社会での話題が先行しておりキワモノ扱いされるのはやむを得ないかとは思う。しかし,ここではともかくマンガ作品としての抜群の面白さを推奨したい。実際,連載1回めから,どはずれて面白いんだこれが。
(ついでにいえば,作画が三田紀房なのも結果オーライ。お世辞にも巧いマンガ家とは思わないが,この人の画風でなければ阿院修太郎先生や芥山龍三郎先生は照れて描けないだろ,普通。)

 たとえば,暴走族だったという前科のある,ヒゲの弁護士・桜木がいい。
 先に相手に主張させるだけ主張させ,返す刀で少なくとも二段,三段の論法を駆使する彼の受験観,人生観の明快さはそこらのスポーツマンガの投球,打撃,格闘理論を数段上回って切れ味,説得力抜群。何より無用な価値観の切り捨てから語り始めること,東大進学の意義について強い信念をもって語れることの2点がいい。こんな先生のいる学校は手ごわいぞ。
 個人的には,国語の芥山先生のファンだ(5巻がいい!)。彼の国語の授業は,とかく雰囲気でしか語られない現代国語を定量化し,学習に明確な指針を与えてくれる。興味深いのはこの芥山先生の指導が受験のテクニックとして極まれば極まるほど,受験を離れた読書や創作,いや,ふろしきを広げるなら「日々の人生の生き方」そのものへの大きな示唆に広がっていくことだ。こんな先生のいる学校は目うろこの連発で楽しいぞ。

 もちろん,この作品で示された受験必勝法がすべて正しいなんぞと主張するつもりはてんからない。マンガの魔球や必殺パンチより多少はリアリティがあるかも,程度に考えておけばよいだろう。大切なのは,たとえば,「教育の現場はサービス業である」という意識,そのうえで教師は何をどのようにサービス提供すべきか,生徒の側はそのサービスを受けて自分がなにを目的に,何をすべきかを,それぞれ常に前向きに自分で「考える」ことだ。
(ちなみに。書評サイトなどで,本作のリアリティ,あるいは受験必勝法への辛口の批判を目にすることがある。その多くは,どうやら「応用」という発想なしに判定を下している気配だ。もしかすると学校や塾の指導のままに勉強してきたタイプの方ではないかと思う。『ドラゴン桜』はまさしくそういう姿勢を笑う。)

 誤解を恐れず言うなら,よりよく受験することはよりよく生きることであり,より強く受験することはより強く生きることだ。
 大勢の受験生の一部でもよい,この作品から少しでも受験の目的を考え,受験の楽しみを発見し,受験の成果を得ることを,心から祈りたい。2割増しなんてまーだまだ,もっと大勢が東大を目指せばよいとも思う。東大でなくてもいい。大学受験でなくてさえよい。この作品で主張されていることは,甲子園でも武道館でも国会でも東京証券取引所でも「応用」の利くことばかりだと思う。

 ちなみに『ドラゴン桜』,最新の11巻は通常版と限定版があり,限定版のほうには価格は少々張るが「東大2次試験予想問題」「鉛筆2本」「お守り」の合格祈願セット付き。受験なんて三十年も前に済ませてしまったのに,思わず買ってしまった。

 頑張れ受験生諸君。とりあえずあと数ヶ月,ポジティブに行こう!

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