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2005/10/20

オバケの本 その九 『諸怪志異(4) 燕見鬼』 諸星大二郎 / 双葉社

225【違うね 邪じゃない】

 『諸怪志異』は,北宋末期の中国を舞台に,さまざまな妖異,怪事を描いた作品集。『捜神記』や『剪燈新話』,『聊斎志異』等から拾ったバケモノ噺が中心ですが,いずれも独自のグロテスクな味付けがコクマロで,よい意味での(?)悪趣味至極,絶品です。

 連載開始当初より,道士の五行先生とその弟子の燕見鬼(妖異を見破る能力を持つ。幼名は阿鬼)の二人が怪事を暴く話と,時代や登場人物を限定しない読み切り怪談とが,ほぼ交代で発表されてきました。サニー・トーンズの歌うエンディング「恐怖の町」も魅力的ですね。

    ♪闇を引き裂く 怪しい悲鳴
     誰だ 誰だ 誰だ
     今夜も 悪魔が 騒ぐのか

 ……おっと,これは円谷プロの『怪奇大作戦』(昭和43~44年)でした。ぺしっ。

 さて,『諸怪志異』は非常にゆったりしたペースで双葉社の「漫画アクション」誌に掲載され,1巻めの「異界録」が1989年5月,2巻め「壺中天」が1991年2月,3巻め「鬼市」が1999年10月と単行本化されてきたのですが,その後の「漫画アクション」誌面刷新にともない,続く数話を掲載したところで事実上打ち切りとなっていました。
 今回の第4巻が6年振りの新刊,しかも困ったことに収録作品は一部の書き下ろしを除いていずれも1999年当時の「漫画アクション」やさらにその前に朝日ソノラマ社の「眠れぬ夜の奇妙な話」(ネムキ)誌などに掲載されたもの。これはつまり,6年経っていまだ『諸怪志異』を継続して発表する場がないことを示しています。

 さらに困ったことには,この諸星大二郎,画風作風からしても決して筆が早いほうでなく,『諸怪志異』もこのままでは二十年,三十年がかりの長期連載になってしまうおそれが……いったいいつになったら第3巻の後半から続いている(はっきり言ってそう面白くない)『諸怪志異』初の長編「推背図」編に決着がつくのでしょうか。

 一方,4巻巻末に付録的に掲載された「土中の怪」「麗卿」2編ですが,こちらは実に素晴らしい。
 燕見鬼(阿鬼)がまだ子供の頃の話で,中国の古典的な妖怪や幽鬼を題材に,ただオリジナルをなぞるのでなく,なんとも魅惑的な怪異譚を提供してくれています。

 たとえば──「麗卿」といえば有名な「牡丹灯籠」のヒロイン(幽鬼)名ですが,ここでは設定を変え,視点を変え,「牡丹灯籠」とはおよそ異なる少し切ない恋愛物語となっています。やや読み飽きた気味のある「牡丹灯籠」をこんなふうにアレンジしてしまおうという意欲,発想だけでもう脱帽です。
 もう一方の「土中の怪」は,「媼(おう)」というあまり聞き慣れない名前の,土の中から現れるキショク悪い妖怪を軸に,悪意に満ちた話となっています。とくに,羊のようで犬のようで豚のような「媼」の造形,また復讐を果たす白い服の少女の墓所での立ち居振る舞いがスピリチュアルでなんともいえません。
 作者には勝った負けたの剣劇アクション化した「推背図」編などとっとと片付けて,この2編のような読み切り短編に力を注いでいただきたいと切に願う次第です。

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