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2005/09/23

オバケの本

 紹介の順番が前後しますが,7,8月は怪談本の何冊かで「無聊を慰め」ました。

 この夏の夜のお気に入りは,ひやひや怖い心霊モノやぬちゃぬちゃキモいスプラッタより,中国や日本の古典的な怪異奇談集のほう。当初からはっきりした心づもりがあったわけではなく,その種の文庫の新刊・復刊を引き金に,読まないまま放置していた書棚の片付けが続いた,そんな感じです。

 それにしてもたとえば『聊斎志異』や『雨月物語』,『耳袋』を読む楽しさ,これは何によるのでしょう。

 最近発刊された蜂巣敦『実話怪奇譚』(ちくま文庫)の前書きには

 つまるところ,本書は,扇情的な事象に惹かれながらも絶えず現実からの逃避を試みるという,気の弱った〝病人〟のためのものなのだ。人生の〝負け犬〟のための書物ととらえてもらってもかまわない。

とありました。さすがに少々へりくだりが過ぎる気がします。
 一方,同じちくま文庫新刊の柴田宵曲『続 妖異博物館』の西崎憲の解説によれば,

 「不思議」は人に「驚異」の感覚をもたらす。「驚異」には効用が多い。……(中略)……大袈裟に言えば,驚異を感ずる度にわたしたちの世界は新生するのである。なぜか? もちろんわたしたちの認識体系がその瞬間再調整されるからである。

とのこと。こちら(とくに「新生」「再調整」!)により本手に近いものを感じますが,いかがでしょう。

 ただ,同じ怪異を扱っても,『新耳袋』や稲川淳二らの現代の怪談と,『聊斎志異』や『耳袋』などの古典では明らかに様子が違います。
 もちろん,後者の,菊の精と契ったり,仙人が悪戯したり,猫が鳩を逃がして残念なりと言ったりとかいう話を今さら信じる者はいないでしょう(いたら失礼)。方や前者の,午後二時にエレベーターで後ろ向きに立つ白い女,自殺者の相次ぐ部屋,髪の長い死者が逆さにぶら下がるトンネルなどは,ひょっとしたらありそうな気もしないではありません。
 しかし,そういった「信じる」「信じない」とは別に,前者は意識の攪乱・動揺を誘い,後者は鎮静・収束を招くという違いがあります。興奮剤と鎮静剤。同じ怪異を扱いながら効果が真反対なのが不思議です。

 このひと夏は,通して,鎮静剤のほうを静かに楽しく読みました。読んだ順も覚えていないいい加減さですが,いくつか取り上げてみたいと思います。

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