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2005/08/04

ブックオフに出回ってからで十分 『陰陽師 12 天空』 原作 夢枕獏,作画 岡野玲子 / 白泉社(Jets comics)

201【もし私が… 重大なことを間違えてしまったら… 何としよう…】

 ある作品が万人向けであるかどうかは,その作品の評価とは別の話。
 一部であれ,読み手の心を深くとらえるなら,それだけでも十分価値のあることであり,その作品を評価しない者たちがいかに否定しても,その作品の評価が減ずるわけではない。

 ……と弁明しといた上で断言してしまうが,12巻は,11巻にも増して最低。

 「深い」といった評価もなくはないようだが,深いとか深くないとか,そんなこと以前にそもそも論外。この書き手は読み手に何かを正確に伝えようとする努力を放棄しているようにしか見えない。そのため,この12巻にいたっては,読み通すのが面倒を通り越して苦痛。
 それを,たまたま波長の合う読み手が評価したとしても,知ったことではない。

 美しいことと美しいものを描くことは別だ。正しいことと正しさを訴えることも,また別。
 作品が作品であるためには,作者の中にア・プリオリに存在するテーマをなんらかの手段で読み手に伝える作業,ないし工程が必要である。その工程と効果抜きにシンパシィだけが成立するなら,それは独りよがりと独りよがりがたまたまシンクロする,悪い意味でのローカル宗教に過ぎない。
 たとえば,同じ少女マンガ系列でいえば,佐藤史生の一部の作品も相当に難解な作風ではある。だが,佐藤史生の場合は,そのテーマを伝えるにはその展開をもってそのように描くしかないという懸命さがある。誠意がある。岡野玲子の『陰陽師』のここ数冊については,その切実さ,誠実さがぽっかり欠落しているように思われてならない。

 少なくとも,ことここに至るまでに,「原作・夢枕獏」の肩書きははずすべきだったろう。
 夢枕獏の作品をすべて高く評価するわけではないが,それでも彼は作家であることを踏み外してはいない。理屈と情をこね回す岡野晴明に比べ,調子がよいばかりの夢枕晴明は浅薄に思われるかもしれない。が,こと「呪」に関して夢枕晴明は深い浅いを論ずる必要のないほど明晰だ。だいいち,夢枕晴明は,情けなくうざうざうろたえたりしない。

 結局のところ,深いわけではない。晴明を維持するに弱いだけなのだ。岡野玲子が。

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