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2005/07/18

『史上最強の弟子 ケンイチ』(現在16巻まで) 松江名 俊 / 小学館少年サンデーコミックス

534【ボク,兼一です ……… 白浜兼一です!!】 ← 2巻のこのページ,大好き

 ここしばらく,少年マガジンより少年サンデーのほうが格段に面白い。その理由の1つが,この『史上最強の弟子 ケンイチ』だ(以後『ケンイチ』と略すことにする)。
 ストーリーは『はじめの一歩』や『ホーリーランド』と大同小異の,「いじめられっ子だった主人公が格闘技と出会って強くなっていくと同時に新しいライバルが次々と…」というものだが,笑えて力が入って,ともかく問答無用に楽しめる。

 読書(マニュアル本!)と花を育てるのが好きな,心優しい少年白浜兼一は,進学した高校でいじめ対策に空手部に入るが,そこでも理不尽ないじめが待っていて,部をやめさせられそうになる。そんなとき,彼のクラスに転校してきたちょっと(かなり,かな)奇妙な女の子,風林寺美羽(ふうりんじみう)が,彼に武術の手ほどきをしてくれる。
 実は美羽の家は

   ここは梁山泊!!
   スポーツ化した現代武術に溶け込めない豪傑や武術を極めてしまった者の集う場所!

なるとんでもない道場であり,そこを訪ねた兼一には

   哲学する柔術家 岬越寺秋雨(こうえつじあきさめ)
   ケンカ100段 逆鬼至緒(さかきしお)
   裏ムエタイ界の死神 アパチャイ・ホパチャイ
   あらゆる中国拳法の達人 馬剣星(ばけんせい)
   あらゆる武器の申し子 香坂しぐれ

たちとの生命が縮まるような恐ろしい出会いが待っていた。……

 実は,この作品には,習作とも言うべき前作がある。「週刊少年サンデー超増刊」に発表された『戦え!梁山泊 史上最強の弟子』である(こちらは以後『弟子』としようか)。
 『弟子』も単行本5巻分が発刊されているが,登場人物,設定など『ケンイチ』とほとんど同じで,これはこれで読み応えのある独立した作品となっている。しかし,『弟子』と『ケンイチ』を比較すると,作者が『ケンイチ』を週刊で連載する際にキャラクターや事件をさっくり料理し直し,より美味しくする工夫を重ねていることがよくわかって実に好感が持てる。またその改善の多くが的確な効果をあげており,ストーリーテラーとしての作者のテクニックをうかがうこともできる。

 『ケンイチ』の作品としての魅力……それは,一見臆病にみえて,その実まっすぐな心を持つ主人公兼一が,人間離れした師匠たちとの出会いと修行によって,知らないうちに力と自信を身につけ,望まずして戦うこととなったライバルたちの心をつかみ,肉体のみならず心をも成長させていくことにある。
 ……と,言葉にしてしまうと,なーんだ少年マンガ毎度のパターンか,と思われそうだが(実際そうなのだが),本作は全編格闘マンガ,ヒーローマンガのパロディに満ち溢れており,ちまちましたギャグと迫力あふれる格闘シーンの合間に,ときに素っ頓狂なばかりの兼一のまっすぐな目が描かれると,読み手の心までざばざばっと洗われる──そんな感じなのだ。

 また,今どきのマンガ家には珍しい,作者の徹底したサービス精神も特筆モノだ。さまざまなイベントは読み手がどきどきわくわくするよう細部にわたって工夫されており,話好きの作者と,それを受け取る読み手との幸福な出会いが味わえる。ヒロイン美羽が必要以上にグラマラスに描かれていることなど,正直いってやり過ぎな面も多々あるが,それもギャグの種にしてしまうことでお色気過剰感が薄められている。単行本の巻末にはおまけの4コマが挿入されているわ,カバーの裏にバラエティあふれるイラストが描かれているわ,ともかく冊子として楽しいのも『ケンイチ』の特徴だ。

 また,格闘技マンガではよくあることだが,本作も心にぐっとくる名言の嵐である。
 ぱらぱらめくって目についたものを抜粋してみよう。

   いいか兼一!
   人生にゃ出来るも出来ねーもねえ!!
   あるのは…
   〝やるかやらないか〟だ!!   by 逆鬼至緒

      頭の中で思い浮かぶかぎりの、
      つらい特訓を考えてみたまえ。
      考えたね?
      そんな物は天国だ!!   by 岬越寺秋雨

   ほのかだけが知っていると思ってた…
   お兄ちゃんの中にある強さ!
   この道場の人達にも
   見つかっちゃったんだね!!   by 白浜ほのか

      たしかに
      百の努力は一つの才に劣るかもしれん…
      だが!!
      千の努力ならどうだ!!
      万の努力なら!!   by ハーミット

 ほめてばかりでキリがないが,5人の師匠をはじめ,敵味方のキャラクターがバラエティに富み,マンガ的にとことん誇張された中にもツジツマが合っているところがまた楽しい。
 たとえば先週発売の号では,秋雨の「岬越寺無限轟車輪!!」なる大技が登場した。これは,十数人の敵をばったばったとねじ伏せて輪っかにつなぎ,「たがいの体重を使って関節をきめてある… 外から他人に外してもらわぬかぎりけっして外れん!」という豪快なワザだ。
 このワザが楽しいのは,単に登場人物の超人的な強さを描くだけでなく,梁山泊のツワモノたちの「不殺」,そしてなかでもこの「哲学する柔術家 岬越寺秋雨」のキャラクターに見事フィットして隙がないからである。

 絵柄,コマ運びには稚拙な面もあり,決してプロとしての洗練度が高いとは言いがたいが,少年マンガらしい楽しさという点で,現在連載中のあらゆる作品の中でもオススメするにやぶさかでない。肩肘張らず,笑って楽しみたい。
 ブックオフなどの大型古本屋で探してもなかなか見当たらず,1巻から16巻までもっぱら新刊で購入しているが,古本屋に出回らないのはいったん読み始めると再読して止まらない人が多いのではないか。なにしろ今夜も1巻から読み返し始めてまた止まらない止まらない。誰か助けてくれ~。

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