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2005/04/04

四角い「結界」で解くあやかしパズル 『結界師』 田辺イエロウ / 小学館 少年サンデーコミックス

544【あたしは力を使いすぎた。 もう十分には戦えない。】

 同じ少年サンデー連載でも,『犬夜叉』は読み逃して平気だが,『結界師』は読み逃すとひどく気になる。『犬夜叉』は自分が取り上げなくとも日本中で読みつがれるだろうが,『結界師』はこの手できちんと評価しておきたい。……

 天下の少年サンデー,それも人気連載をマイナー扱いとは失礼な話だが,『結界師』にはいまだインディーの風味が強い。

 作者,田辺イエロウはこれがデビュー連載。
 単行本400冊余の高橋留美子と比較するのも無茶な話かもしれないが,同じ少年誌に連載,戦国~安土桃山時代と現代を結ぶ謎,和服姿の主人公が妖怪と戦う,「犬」が薬味,などなど,この2作には似た要素が少なくない。だからこそ『結界師』の特異性がものを言う。

 クリアな線を求める少年サンデーだけにさすがに一定の水準は保っているが(高橋留美子と比べるまでもなく)絵柄は決して美麗とは言い難い。
 お姉さん色で統一されたヒロイン・時音(ときね)はともかく,茄子紺の着物にデイパック,スニーカー姿の主人公・良守のキャラはいかにも未整理で,底が知れない凄みを垣間見せつつ,結局は表情といい能力といい雑然として片付かない。
 主人公たち「結界師」が対決する妖(あやかし)は,現在の烏森学園(中等部・高等部)の地下にあるという烏森家の祠から得られる力を求めて現れる。つまり,『結界師』は,主人公の自宅と学校のたった2箇所という極めて限られた地域における専守防衛の攻防を描く物語なのである。
 妖の正体は,単なる亡者(幽霊)から,知性の感じられない小ぶりな浮遊妖怪,果てはなにやら組織化された巨大化け物集団まで,枠が明確でないことはなはだしい。

 かくの如き散らかった子供部屋のような設定の中,ひるがえって主人公たちが武器とする「結界」は極めて幾何学的かつ明晰である。
 直方体のガラス函のようなその「結界」の張り方は以下のとおり。

  「方位!」 人差し指と中指を立てて結界の方向を指定。
  「定礎!」 指差して結界の位置を指定。ちなみに建築用語と違って「じょうそ」と読む。
  「結!」 平面の正方形をにょきっと持ち上げて立体にするイメージで,直方体の結界を成形,発動する。敵を囲むだけでなく,味方を敵の攻撃から守ることもある。
  「滅!」 結界に囲んだ敵を,結界ごと消滅させる。それより早く結界が破られると敵に逃げられる。
  「解」 結界を解く。

 作法はほとんどこれですべてだが,組み合わせ次第でさまざまな攻撃,守備が可能になる。
 たとえば適当な空間に結界をいくつか成形することで空中を飛び歩くことができる。結界を幾重にも重ねることでより強力な敵をも攻略することができる。ねそべって本を読むときの書見台に使える。
 もちろん,これらのワザを実現するためには,「結界」そのものについて一種の体力や正確さを得るための日夜の訓練が必要である(このあたり,カンフー映画的だ)。

 『結界師』は,各話ごとにごみごみした設定が未整理に提示されるが,それぞれの事件,さまざまな特性を持つ敵に対して,上記の「結界」という手段のみを用いて事件を解決する一種の知的パズルとなっている。これが面白い。

 単行本は現在6巻。最近は烏森の謎そのものに加え,妖に対抗するはずの「裏会」自身が化け物集団化し,そこに良守の兄・正守が入り込んでいく過程と,妖側の組織の暗躍が複雑にからんで,はたして無事に収拾がつくのか心配な間口の広げ方である。

 少年誌,それも週刊誌の連載はどこまで長期化するか知れず,連載が一段落するまで単行本はなるべく買わないことにしているのだが,本作はついつい発刊のたびに購入してしまう。そして展開や作画の荒っぽさにはらはらしつつ,結局は楽しんでいるのである。
 ……良守と時音は明日も頑張るのでした,で終わらせたら「滅!」だからな。 > 作者

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