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2004/11/09

最近の新刊から 『百鬼夜行抄(12)』 今 市子 / 朝日ソノラマ 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス

Photo_3【この子の目にはいったい何が見えているんだろう】

 『百鬼夜行抄』の怖さについては,以前取り上げたときからとくに新ネタを思いついていないので,今回は触れません。愛ニモねたニモ飢(カツ)エテイルノヨ,今日コノゴロ。

 第12巻は突出して怖い話があるでなし──台所に開いた底なしの丸い穴はちょっと怖かったかな──飯嶋家やそれをとりまく妖魔たちに思いがけない展開があるわけでもありません。司ちゃんに彼氏が出来たりもしたけど,なんだか浮いた感じだし,地味といえば地味,そんな印象です。

 ただ,今回収録の少し長めのお話「水辺の暗い道」に登場する遠野真理子は,なんというか,非常に魅力的でした。

 真理子は『百鬼夜行抄』によく登場する巻き込まれ型の,一話限りの登場人物にすぎませんが,少し違うのは彼女自身が「見えて」しまうタイプ,それも雑霊よりはもう少し高い次元のものが見えるらしいことです。
 田舎暮らしのごく普通の若い娘が,そんな自分におびえ,都会に逃げ出し,結局は郷里に戻って「ふしさん」(巫者さん)のあとを継ぐ……。「水辺の暗い道」は,真理子を中心にとらえれば,そういう物語です。

 真理子が魅力的に見えるのはなぜなんだろう。

 彼女は場面によって大人びていたり子供じみていたり,あるいはコマによって髪の色や顔の造りが不統一で,何度か読み返さないとほかの登場人物と混乱しそうになります。早い話が,作者の絵柄が彼女を魅力的に描き上げているというほどではありません。

 しかし,やはりいろいろと「見えて」しまう律と出会って,「……怖がりで 弱音を吐きあえる こんな相手が側にいてくれたら」と願い,田祭りと事件が一段落した最後のページで「…ふしさんでも就職も結婚もできるのよ」と自らを指差す真理子の子供っぽいしぐさはやはり愛おしい。
 単に可愛いとかそういうことではなく,「正式なシャーマン」とうぶな印象のギャップに魅かれるのかもしれません。どんな世界が見えているのかわからないシャーマンに,「あ… あなたって割といじわるなんですね」と言われるシチュエーション……どきどきしますね。僕だけかしらん。

 うまく言えませんが,真理子は,まだ出会ってはいない誰か,生まれてこなかった誰かに,少しだけ似ているような気がします。
 僕たちは何度も真理子と出会っているのに,いつも忘れてしまうのです。

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