最近の新刊から 『ヒストリエ(1)(2)』 岩明 均 / 講談社 アフタヌーンKC
【「ぼんやりにも程がある」】
ごく稀にですが,出会えた喜びに体が知らず熱くなるような,そんな作品があります。しかし……出会ってしまったことに畏れさえ覚え,体がきいんと冷たくなる,そのような作品はさらに得がたいものです。
『骨の音』『寄生獣』の岩明均の新作『ヒストリエ』は,まさしくそのような作品の1つです。
主人公エウメネスは,第1巻の帯によるとアレキサンダー大王の書記官とのこと。
ですが,第2巻まででは,旅の若者エウメネスの幼年時代が描かれるばかりで,まだ彼が「何者」なのかは明らかではありません。……ただ,少なくとも彼が「ただ者ではない」ことだけはさまざまな切り口から描かれています。白っぽい絵柄,淡白な述懐に浮き彫りにされるエウメネスの底知れぬ資質──それをさっくりと描き抜く作者の手腕──は,鳥肌が立つほどです。
(単行本の表紙からすると,カラーは苦手,ということかもしれませんが……。)
ローマ・カルタゴ間の紛争に巻き込まれたシラクサ,そしてアルキメデスの死を描いた前作『ヘウレーカ』は「さあこれから!?」と期待されたところで終わってしまいました。今となっては,それは本作のための習作だったのか,などと邪推したくなるほどです。しかし,つまらぬ論評はほどほどにして,しばらくはただ作者の技に身をゆだねましょう。
萩尾望都『バルバラ異界』とともに,現在最も注目すべき連載作品であることは間違いないと思います。『バルバラ』は想像力の飛翔の自在さにおいて,『ヒストリエ』は表現(記録)への透徹した誠意において。
« 最近の新刊から 『ミステリー傑作選45 殺人作法』 日本推理作家協会編 / 講談社文庫 | トップページ | 最近の新刊から 『百鬼夜行抄(12)』 今 市子 / 朝日ソノラマ 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス »
「コミック(作品)」カテゴリの記事
- 『ヒジヤマさん 星の音 森のうた こうの史代短篇集』 こうの史代 / コアミックス ゼノンコミックス DX(2025.07.03)
- おやすみセニョリタ 『ROCA コンプリート』 いしいひさいち / 徳間書店(2025.06.10)
- 短評 『片田舎のおっさん、剣聖になる(7)』 乍藤和樹 / 秋田書店 ヤングチャンピオンコミックス(2025.04.04)
- 短評 『新九郎、奔る!(19)』 ゆうきまさみ / 小学館 ビッグスピリッツコミックススペシャル(2025.04.04)
- 『日野日出志ベストワークス』『日野日出志グレイトワークス』 日野日出志 著、寺井広樹 編著 / 太田出版(2025.03.31)
« 最近の新刊から 『ミステリー傑作選45 殺人作法』 日本推理作家協会編 / 講談社文庫 | トップページ | 最近の新刊から 『百鬼夜行抄(12)』 今 市子 / 朝日ソノラマ 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス »


コメント