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2004/10/04

最近読んだ本 『エマージング(1)』『エロイカより愛をこめて(30)』

Photo_6『エマージング(1)』 外薗昌也 / 講談社モーニングKC

 このところ『ブラックジャックによろしく』(佐藤秀峰),『Ns'(ナース)あおい』(こしのりょう),『スピナス』(清水みよこ,楠木あると),『ES』(総領冬実),『サイコドクター 楷恭介』(亜樹直,オオモト・シュウ)と,すっかり医療,治療機関づいているモーニング。白衣だらけである。
 そこに,さらに加えてこの『エマージング』。

 本作はモーニング32号で連載開始,9月22日発行の単行本第1巻には42号までの掲載分が収録されている。
 破天荒なことだ。

 9月22日木曜日にはモーニングの43号が発売され,『エマージング』の連載第11回が掲載されている。つまり,単行本の発行が連載に追いついているのだ。出版のデジタル化,オンライン化が進んでいる中でも,かなりの荒業といっていいだろう。

 『エマージング』では,ストーリーもまた,時間との闘いである。
 新宿の交差点で,あるサラリーマンが目,鼻,口,耳から大量の血を吐き,のたうち回って死ぬ。病院に運ばれた死体は,まるで死後3日は経過しているかのごとく眼球が溶けくずれ,全身がプリンのようにとろけて下部にたるみ,壊死による腐敗臭を撒き散らかす。エボラに似たこの出血熱のウイルスは,過去に存在したどのウイルスにも該当しない。それはつまり,これが日本初のエマージング(新興)ウイルスであることを示していた……。

 なにしろ,連載4ページめに登場する女子高生,本作のヒロインと思われるこの可憐な少女が単行本の後半にはもうふくれあがって足をばたつかせながら口から血を吹き上げる。最初のサラリーマンの死の場面に居合わせた人々の大半が発病するという,エボラ以上に強力なウイルスと向き合わざるを得ない医療,行政,研究機関……ストーリーの先はまったく読めない。

 だが,このエマージングウイルスの猛烈な感染速度の一方で,本書は奇妙にのんびりした雰囲気も漂わせる。

 リチャード・プレストンの『ホット・ゾーン』等でBL4(バイオセーフティレベル4)機関の厳重な上にも厳重な管理にすくみ上がった者としては,症状の進んだ患者に対しマスク1枚で治療にあたる医師,その医師たちが病院内を闊歩したり,普通の交通機関でマンションを行き来したりする,その呑気さがかえって異様だ。出血熱の患者の血に触れたかもしれない手を,水道で洗うってのはありなのか。
 日本にはエボラ級のウイルスに対処できる設備,ノウハウがないからといえばそれまでなのだが……。

 本書のエマージングウイルスは,連載現時点では,治療法はもちろん,感染経路も,潜伏期間も,何ひとつわかっていない。しかし,患者はすでに100人を超え,マスコミもその存在に気がついた。
 タダではすまない。注目である。

『エロイカより愛をこめて(30)』 青池保子 / 秋田書店プリンセスコミックス

 「まだ,続いていたの?」という妙齢の女性も少なくないかもしれない。

 かつては熱狂したり,爆笑したり,とファンを自認しながら,そのうち,いくたびかの作風の変遷,あるいは生活の変化とともに,少しずつ離れていった読み手の方々。かくいう筆者も,新刊を見かけるたびに購入してこそいるが,熱心な読者とは言いがたい。

 だが,今回の第30巻は,かつて本シリーズが大好きだったという方にはぜひとも手にとってほしい。
 あの『Z -ツェット-』の最終話,「Z・VI(ツェット ゼクス) -ファイナル・ストーリー-」が掲載されているのだから。

 エーベルバッハ少佐の部下,Z(ツェット)を主人公とするこのシリーズは,1979年の夏に白泉社の「LaLa」で開始され,1983年の第5作までが何度か単行本化されている。そして1999年,突然第6作が白泉社「メロディ」に掲載されたという,短編ながら息の長い作品である。

 なぜ『Z -ツェット-』は16年ぶりに描かれたのか,また(Zが死ぬわけでもないのに)なぜ最終回なのか。その理由は作者青池保子の1ページ分のコメントに簡潔に記されている。お奨めしたいのは,作品そのものより,そのコメントのほうかもしれない。短いながら「戦後」「昭和」を引きずった者にはじわっとくるものがあるテキストなのである。

 馬鹿馬鹿しくも華麗に展開するエロイカと少佐,ミーシャやジェイムズ君たちの活躍の背景に,いつの間にか25年以上の月日が経ったことに愕然とする。作者のプロ意識と,プロでありながら(もしくはプロだからこそ)登場人物を愛する気持ちがうかがえて……そう,途方に暮れるのだ。

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