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2004/07/13

(大袈裟だけど)我が人生の一冊 『イシミツ』 白土三平 / 小学館文庫

079【イシミツならおまえたちに毎日のませていたではないか!!】

 木ヘンに「色」,身ヘンに「黒」の異体字,人ベンにやはり「黒」の異体字,サンズイに「黄」。これで「イ」「シ」「ミ」「ツ」と読む。

 忍者文字は七種のヘンに七種のツクリを組み合わせ,それをいろは文字にあてはめて一種の暗号をなしたものだそうである。ただし,実際に忍者文字というものが存在したのか,白土三平の創作なのかはわからない。

 今では笑い話にもならないが,大学生がマンガを読む,それだけで事件になった時代があった。1960年代後半だったろうか。その少し後には,サラリーマンが電車の中でマンガを読む写真が新聞紙面をにぎわしたこともある。

 一点明らかなのは,少なくとも当時,マンガはしょせん子供だましの低劣なものであり,成人,文化人が読むに足るものではないという考えがあったことだ。当時の,とくに劇画的表現に対する社会的反感はさらに苛烈で,新聞紙面などでごく当然のように非人間的,暴力的,野卑,俗悪と罵られたものである。

 『イシミツ』はそれらの報道よりさらに以前の昭和38年(1963年),少年サンデー誌上に掲載された作品である。
 物語は「イシミツ」と呼ばれる不老長寿の霊薬をめぐって展開する。
 平安,鎌倉,戦国,そして江戸中期,それぞれの時代の忍者たちが,あるときは奪い合い,あるときは共闘して「イシミツ」の謎を追う。

 史実,実在の人物に虚構をちりばめ,忍者同士の壮絶な戦闘と忍法についての薀蓄,さらに各時代における農民たちと支配層の対立を巧みに織り込んで間然するところもない。これで150ページに満たないとは,何度読み返しても信じがたい。

 添付画像は昭和52年2月20日発行の小学館文庫版。
 幸い,『イシミツ』は現在も小学館文庫などで入手できるようなので,機会があったらぜひともご覧いただきたい。
 昭和38年に,マンガはすでにここまできていたのだ。

 白土三平は『カムイ伝』『忍者武芸帳-影丸伝』『サスケ』といった長編は別格として,この『イシミツ』のように1つの謎,忍法等をとことん追求するタイプの中編,連作がいい。たとえば,傷一つなしに人を呪い殺す「丑三の術」をめぐる『真田剣流』。

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