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2004/04/08

サン=テグジュペリの機体確認される

5771 『星の王子さま』の作者,サン=テグジュペリの操縦した戦闘機の一部が,フランス南部マルセイユ沖で発見されたそうである。
(正確には墜落時の目撃者によっておおよその場所は知られていたのだが,その情報をもとに昨年引き揚げられた機体が,機体の製造番号から彼の乗っていた戦闘機だと確認されたらしい。)

 新潮文庫の堀口大學訳『夜間飛行』,『人間の土地』,『戦う操縦士』は,僕の知る限りでもっとも古めかしくも美しい散文翻訳の1つだ。体の中を小さな砂の粒が縦に横に通り過ぎてゆくような,そのたびに体が冷たい水のように透き通っていくような,そのような言葉のベクトル。過剰な比喩がもたらす,己がまだ得たことのないもの,決してたどり着くことのない地平への郷愁。

 サン=テグジュペリがロッキード社の戦闘機P38ライトニングで消息を絶ったのが大戦末期の1944年,つまりほんの60年前だと思うと驚く。その清冽な精神のあり方がこの「現代」のほんの手前に記されたことに驚く。

 新潮文庫の表紙は数年前に著名なアニメーターのイラストに差し替えられた。
 言うまでもなく,一人の夜に手に取るならそれ以前のものにしたい。宮崎駿の作品は嫌いではないが,あの砂漠の処女地に点点と落ちている涙の形をした黒い隕石を描いた『人間の土地』の表紙を飾るには夾雑に過ぎる。

  林檎の木の下にひろげられた卓布の上には,林檎だけしか落ちてこない。
  星の下にひろげられた卓布の上には,星の粉しか落ちてこないわけだ、……

(『人間の土地』 堀口大學訳)

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