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2004/03/15

最近読んだ本 『のだめカンタービレ(8)』『白夜行』『老女の深情け 迷宮課事件簿(3)』

Photo『のだめカンタービレ(8)』 二ノ宮知子 / 講談社 Kiss KC

 早くも8巻め。1巻が2002年1月発行,つまり2年で8巻。掲載誌が月2回刊であることを考えれば,少しびっくりしてよい刊行ペース。
 しかも,テンションは高まるばかり。

 帯の惹句には「こんなに笑えるクラシック音楽があったのか!?」とあるが,『のだめ』はもはや「笑い」の領域にはない。上質な『ルパン三世』作品においては,ちりばめられたギャグに笑う以前に完成度に見とれるしかなかったように,『のだめ』8巻では一瞬も笑うことができなかった。
 ここに描かれているのは,ただ,正しく音楽である。
 息が詰まるほど感動する以外に何ができるというのか。

『白夜行』 東野圭吾 / 集英社文庫

 少々動機が不純で,最近諸般の事情から長編小説から離れていたのだが,「いけない,このままでは長距離走に耐えられないカラダになってしまう!」なる焦燥感から,ながく本棚で寝ていた本書を手にとった。

 噂にたがわぬ傑作であった。
 もちろん,数行で感想を語り尽くせる作品ではない。

 新本格派と称する作家の多くが「パズル」を強調するのに対し,『白夜行』はそのまったく逆,動機や犯人の心のあり方に重心を置こうとする試みである。文庫にして800ページを越える膨大な記述の果てに,読み手は最後まで描かれなかったものの重みに圧倒される。

 この長編は,ある意味,許されない人々がいかに許されないか,を描いた作品である。能天気な翻訳をするなら「白夜行」とは「御天道様(おてんとさま)の下を歩けない」の言い換えである。そして,登場人物たちが自分たちの行く末を「白夜」の下に見据えるように,読み手も生半可な感情移入は許されない。
 だが,これほど苦い物語に,こうまで心洗われる気がするのはなぜだろう。

 なお,細かいことだが,1970年代前半に起きた最初の事件以来,『あしたのジョー』連載終了,山口百恵ブームなど,妙に世俗的な描写が頻出するのに違和感があった。これらが必要だった理由は最後に明らかになる。ただ,文章としてはその何箇所かがどうしても浮いていて,もう少し手はなかったのかという気もしないではない。

『老女の深情け 迷宮課事件簿(3)』 ロイ・ヴィカーズ / ハヤカワ・ミステリ文庫

 ヴィカーズといえば倒叙モノの「迷宮課」シリーズ。

 「倒叙モノ」というのは,犯人の視点から物語を書き起こし,あわや完全犯罪,といったところでちょっとした見落としから探偵に暴かれて大逆転,というミステリの一手法である。
 オースチン・フリーマンの短編集『歌う白骨』を祖として,フランシス・アイルズ『殺意』,クロフツ『クロイドン発12時30分』,リチャード・ハル『叔母殺し』などが追従した,とたいていのミステリ史で紹介されている(本当)。要するに『刑事コロンボ』や『古畑任三郎』の展開,あれだ。

 ヴィカーズは,その倒叙モノの短編集『迷宮課事件簿(1)』で知られており,これが1977年にハヤカワ・ミステリ文庫から発売されて,それっきり,音沙汰もなく……。
 と思ったら,今年になって3巻めの『老女の深情け』を書店店頭で発見して「えっ,なぜ第3巻???」。失礼しました,昨年夏に第2巻の『百万に一つの偶然』が発売されていたのですね。それにしたって,2巻が26年ぶりとは。相当に深い「迷宮」にはまりこんでいたとみえる(先に紹介した叙事的な大作『白夜行』で流れた年月にも匹敵!)。

 さて,作品としてはどうか。
 元来,倒叙モノには非常に面白い作品が多く,本シリーズでもハタ,と手を打つ作品もなくはない。……のではあるが,いかんせん,20世紀初頭(1930年ごろまで)を舞台にした作品だけに,犯罪が発覚するきっかけとなる小道具がわかりにくく,そのため,いくつかはどうも今ひとつカタルシスに至らなかった。
 誰も疑いすらしなかった犯行が発覚するのが,犯人が「荘園邸の羽目板細工」を処分したため,と言われてもなあ。なんだそれ。

 コロンボや古畑任三郎がああまで痛烈だったのは,映像ゆえ,なのかもしれない。
 アリバイを練り上げた犯行のサスペンス。不敵な笑みさえ浮かべる犯人。ちょっとした小道具や言葉じりから犯罪が暴かれた際の,探偵の申し訳なさそうな口元……。

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