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2004/03/22

最近読んだ本 『頭文字D(28)』『モーツァルトの子守歌』ほか

558【場数と経験の量が 自信と技術を作る・・】

『頭文字D(28)』 しげの秀一 / 講談社(ヤングマガジンKC)

 読者諸君はかつて『頭文字D(27)』の書評において,筆者が「プロのドライバーにも勝ってしまったプロジェクトD,今後読み手が納得できる壁はあり得るのか」と疑問を呈したことをご記憶だろうか。

 ……と,ナレーション口調もちょっぴり『頭文字D』ふうだが,新刊では早速それに対する1つの回答が提示されている。拓海ではないが「そうくるか」と思わず納得の展開だ。
 ここで「オトナ」を出してくるとは,やるなぁ,しげの秀一。

 高橋啓介と恭子ちゃんのラブラブファイヤーもあえなく散って,ソリッドな公道バトル路線に戻り,結局のところ,無節操な闘いの拡大再生産にも陥らず,ラブアフェアも飾りの域を出ず,『頭文字D』はそのあたりのストイックさが魅力なのかと思ってみたりみなかったり。

『モーツァルトの子守歌』 鮎川哲也 / 創元推理文庫

 斯界の巨匠ならストイックかというと,当然ながらそんなことはない。
 創元推理文庫から最近立て続けに復刊された<三番館>シリーズ,主人公の探偵が持ち込む謎をバー<三番館>のバーテン氏が快刀乱麻に解いてみせるという典型的な安楽椅子探偵タイプの短編集だが,この名作にして,後半はダレダレにダレてさっぱりだった。

 後半というとどのあたりかというと,
  『太鼓叩きはなぜ笑う』
  『サムソンの犯罪』
  『ブロンズの使者』
  『材木座の殺人』
  『クイーンの色紙』
  『モーツァルトの子守歌』
と全6冊並べて,3冊めの『ブロンズの使者』あたりですでに少し緩んだ印象があり,4冊めの『材木座の殺人』ではすっかり弛緩しきっていた。

 何が違うのだろう。
 この<三番館>シリーズの各作品は,おおむね,まず肥った弁護士が探偵に調査を依頼,探偵が足と口を使って執拗な調査を行うがどうにも埒があかず,<三番館>のバーテン氏に相談したところ,意外な着眼点から事件の様相がまるで異なるものになる……という筋書きである。ところが,後の作品になればなるほど,この探偵の調査が適当だったりそもそも欠落していたりするのだ。つまり,あらゆる可能性が検討された後にバーテン氏の指摘があるからこそ,その推理の見事さに打たれるはずなのに,十分な検討,検証を経たうえでないなら,それは単なる可能性を1つ追加するだけなのである。
 実際,『クイーンの色紙』や『モーツァルトの子守歌』収録作品にいたっては,素人読者にも,ほかの解決案が指摘できそうなものがある。「本格」だの「安楽椅子」以前の問題だろう。

 ただ,作品そのものがつまらなくなる一方,一種の「見もの」として注目に値するのが,各巻の解説である。
 なにしろ,作者は本格の巨匠。東京創元社の抱える資産の中では一番の大物かもしれない。あだやおろそかに扱えない巨匠に対する苦し紛れの世辞追従。
 各巻の解説担当者が,テクニックの限りを尽くして作品をそして鮎川御大を持ち上げるさま(あヨイショ!),春の宵にブランデー片手に味わうだけでも十分豊かでインテレクチュアルな時間を過ごせるように思われるのだがさて如何。

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