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2004/02/16

『バジリスク -甲賀忍法帖- (1)~(3)』 原作 山田風太郎,漫画 せがわまさき / 講談社アッパーズKC

Photo_2 【見破るとは このわしをか? 蛍火】

  光あるところに影がある。まこと栄光の影に数知れぬ忍者の姿があった。
  命をかけて歴史を作った影の男達。だが人よ,名を問うなかれ。
  闇に生まれ闇に消える,それが忍者の定めなのだ。

(『サスケ』オープニングナレーションより)

 というわけで理屈抜きに忍者漫画が大好きだ。

 とはいえその大半は白土三平作品の魅力であり,残る一炎も横山光輝の『伊賀の影丸』に負うところが大きい。会社社会を引退後は都のたつみに小さな庵を設け,晴耕雨読,灯火の下に彼らの作品を紐解いて三昧境に至るがささやかな夢の一つである。

 ただ,残念なことにここしばらく上質な忍者漫画は影を潜め,忍者漫画ファンはいしいひさいちの『忍者無芸帳』に渇を癒すしかない。
 ちなみに少年ジャンプに掲載された桐山光侍『NINKU -忍空-』や岸本斉史『NARUTO』などでは,設定にこそ「忍者」「術」といった言葉が用いられているが,登場人物のファッションなどからも明らかな通り,日本の歴史上の忍者を描くつもりは毛頭なく,単なるファンタジー冒険活劇の一,どちらかといえばアクションゲームの系譜に近いとみなしてよい。

 そこで『バジリスク』である。
 本作は原作に山田風太郎の『甲賀忍法帖』を仰ぎ,化け物じみた忍者同士の荒唐無稽な技対技の対決,殺法ありお色気あり,まこと久々に忍者漫画の王道を歩む作品といえる。

 徳川三代将軍の世継ぎ問題に決着をつけるため,十人対十人で忍法殺戮合戦をして生き残りを懸けることになった甲賀と伊賀。共に愛し合う甲賀弦之介と伊賀の朧は,ついに互いが殺し合う運命となったことを知った!
 というのがストーリーの大枠なのであるが,まぁそういう設定は忘れてかまわない。要はおよそ人の肉体のなせる技とも思えない忍法と忍法,体術と体術の対決がすべてなのだ。土や壁の中を音もなく移動する霞形部,全身の皮膚が吸盤と化して相手の血を吸うお胡夷(こい),あらゆる体毛が尖って武器となる蓑念鬼,かまいたち現象を起こして相手を切り裂く筑摩小四郎……。

 『バジリスク』に登場する忍者たちは,その化け物度合いといい怪異な面貌といい,まことに申し分ない。それぞれの技の描き方も秀逸で,ことに甲賀の首領,甲賀弦之介がその得意技(これが『バジリスク』のタイトルの源となっているのだが)を発揮したシーンの迫力たるや,ここしばらくのあらゆるコミック作品でも類を見ない。
 そして,これらおよそ無敵の忍法,体術が,戦う相手によって,あるときは優位に,あるときは不利に働くその組み合わせの妙。

 ただ,欲をいえば,コンピュータグラフィックスを多用しすぎた絵柄は,ただ重いばかりでコマごとのメリハリがなく,また忍者漫画としてはやや動きに欠けるように思われる。作品のデジタル化にのめり込んだ寺沢武一の『武-TAKERU』がそうであったように,一コマ一コマの効果にこだわるあまり,白土作品,横山作品に見られる忍者同士が木から木へと素早く飛び移りつつ戦う,そういった動的なシーン(そしてその反動としての静的なシーン)が非常に少ないのである。ただ,その意味で,第三巻の如月左衛門と蛍火の戦いは動きが華やかで出色であった。

 ところで,甲賀と伊賀といえば,なんとなく技や勝負にこだわる無口で硬派の甲賀,どことなく悩みをかかえた美貌のウェルテル伊賀,といったイメージが強い。戦いに勝利してなお敵方を慮る伊賀の影丸の印象が強いせいだろうか。

 もう一点,昔から不思議なのは,多くの漫画作品,時代劇において,忍者たちが刀を帯びていることである。隠密剣士秋草新太郎や浪人矢車剣之助ならともかく,甲賀,伊賀の忍者は帯刀を許されていたのだろうか?
 と思って調べてみたら,広辞苑に「甲賀者」は「江戸幕府に仕えて鉄砲同心を勤めた甲賀の地侍出身者。隠密に秀でたといわれ,伊賀者と並称。甲賀衆」とあり。なるほど。

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