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2003/09/10

最近読んだコミック その二 『ホムンクルス(1)』

269『ホムンクルス(1)』 山本英夫 / 小学館ビッグコミックス

 ホムンクルスとは,フラスコの中で創造される人造人間のこと。
 16世紀の医師,錬金術師のパラケルススによれば,人間の精液を馬糞とともにフラスコに入れて40日間密封すると,透明な生命が誕生する。これを人間の生き血で養い,40週間一定の温度で保存すると,フラスコの中に小さな人間が創造される,というものだ。ホムンクルスは,ゲーテの『ファウスト』に登場することでも知られている。

※Googleで検索してみた。
  ホムンクルス 117,00件
  ホルムンクス 75件
  ホムルンクス 46件
  ホンムクルス 14件
  ホルンムクス 3件
となった(46へぇ)。この数字──つまり間違い,書き違いは多いのか,それとも少ないのか。ちなみに,カラスもときどき「ホルモン → ホルムンクスだったかな」など記憶が納豆になる(エーゲ海でガラスを割ったホムンクルスと女神ガラテアへの拙いオマージュはこちら)。

 さて本題。
 山本英夫の『ホムンクルス』は,別にフラスコの中の人造人間を描いたものではない。
 主人公は新宿西口のカーホームレス(車上生活者)の名越進,34歳。金のつきた彼のもとに,医大生伊藤学が話をもちかけてくる。頭蓋骨に穴を開ける手術(トレパネーション)を受けてくれたら70万円を支払う,というのである。

 登場人物は数少なく,顔のアップが多くてセリフも少ないため,流れを把握するのはさほど困難ではない。だが,その流れの意味を日常の言葉に置き換えるのはおよそ容易ではない。実に異様な展開である。名越がなぜ車上生活者になったのか,「人間オタク」伊藤学の真意はどこにあるのか,推理の端緒すら与えられず,感情移入は難しい。伊藤学の容貌はファッション的にもまことに気色悪く,作者の筆から愛着と悪意のバロメータは読み取れない。
 そもそも,あらゆるコマ,あらゆる細部について,作者がどこまで意図的なのかは不明だ。たとえば,名越が羊水のように体を丸めて眠る車は60年代のマツダキャロルで,その選択は絶妙だが,なぜキャロルでなくてはならないかは説明できない。

 山本英夫は,ヤングサンデー誌上の『のぞき屋』,そして『殺し屋1 -イチ-』の印象が強い。印象が強すぎて,作者が何を描こうとしているのかさっぱりわからない,そういった作家の1人である。『殺し屋1』では泣き虫の殺し屋,自傷癖のあるヤクザなどインパクトの強い登場人物が少なくない。その中でも記憶に強く残っているのは,ナイフ使いの巧みなヤクザが,若い女性の乳首を服の上からスっと切り落とすシーンだ。ラオウやケンシロウが圧倒的な破壊力で相手を抹殺するシーン以上に,それは徹底的な「破壊」であったような気がする。円形に両の乳首を切り落とされた女は,その瞬間,想像を絶するほどに壊されてしまう。この衝撃は並みではない。

 しかし,インパクトが強いからといって,山本英夫が高く評価できるわけではない。いや,評価はする。するのだが,その評価には必ず留保が伴う。

 いうなれば,山本英夫は,ゲテモノ料理の一大名人なのである。イグアナの脳味噌とゾウガメのペニスとナメクジの和え物,が果たして美味かどうか。インパクトの瞬間,ヘッドは回転し,味のことなど忘れてしまうのではないか。つまり,山本英夫は強烈な腕を持ちながら,いや持っているからこそ,客からみて何を作っているのかよくわからない料理人なのである。つまりは食事の領域を越えてしまっているのだ。

 本作『ホムンクルス』も,予想にたがわない,いや,予想を格段に越えたゲテモノ料理である。美味なのか,美味ではないのか,今はまだわからない。とりあえず,1巻めの食材はかなりとんでもないものであった。続刊に注目したい。

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