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2003/09/08

最近読んだコミック その一 『のだめカンタービレ(6)』『ヒカルの碁(23)』

23『のだめカンタービレ(6)』 二ノ宮知子 / 講談社 Kiss KC

 何度か取り上げてきた「のだめ」だが,いまだテンション下がらず。

 今回もスパークするギャグの中に,
「いいえ! 軽くなんて…… そんな練習 ないんです! わたし」
と泣けるセリフも散りばめ,油圧ショベルとフォークリフトで社交ダンスを踊るような濃い世界が展開する。

 ところで,主人公のだめ(野田恵)を除く,千秋真一,奥山真澄,鈴木萌・薫らのSオケメンバーはこの巻で学部を卒業である。飛行機恐怖症,海(船舶)恐怖症の千秋は海外留学もできず院に進むが,それ以外のSオケのメンバーはそれぞれの道に進む。
 本作は読み切りでこそないものの,ギャグの印象が強く,『サザエさん』『ドラえもん』『うる星やつら』的時間の停止した無限ループをついつい想定してしまう。しかし実のところ作者の資質はそういったループ系ではない。前作の『GREEN』でも,最終巻で主人公たちの結婚というかなり思い切りのよい展開を見せている(その結婚式に用意されたエピソードが,また,ほかの作者ならまず選ばないような思い切りのよいものであったが)。

 逆に言えば,『のだめカンタービレ』には,読み手の予想などまったく通用しないということだ。ダイナミックに揺れながら長く続くのか,それとも思いがけないアップダウンを見せて数巻内で物語を閉ざすのか。そのとき,読み手はカラカラと笑うのか,それとも「やられた」と下唇を噛みながら涙を落とすのか。

『ヒカルの碁(23)』 原作 ほったゆみ,漫画 小畑 健,監修 梅沢由香里四段(日本棋院) / 集英社(ジャンプ・コミックス)

 『ヒカルの碁』が終わった。
 以前も「佐為編」完結後に再度連載が始まったという経緯はあるが,いちおう原作者による挨拶もあり,単に「北斗杯編」が終わったということではなさそうだ。
 この作品が絵柄,ストーリーともに非常によく出来ているにもかかわらず,根っこのところでなぜつまらないかは以前述べたので繰り返さない。……が,この最終巻はそれにしてもひどい幕切れであった。

 たとえば,ボクシングマンガの『はじめの一歩』なら,いじめられっ子がプロボクサーの鷹村と知り合い,ライバルと出会い,その時点までに用意されていた身体的資質を伸ばし始め,その成長に応じて闘う相手の壁も高くなる。つまり,1巻めから,摂理はゆきわたっているのである。
 それに対し,ヒカルは23巻を費やして,いまだ碁盤の上で闘う理由を見出すことができない。最終巻でも泣いてみたり無理繰り言葉で説明したりはしてはみせたが,説得力に欠け,対局相手にさえ鼻で笑われる始末だ。今後彼が訓練によっていかに勝率をあげようが,彼の存在が他者を脅かすことは当分ないだろう。彼は本質的にまだ勝負師のステージには上がれていないのだ。
 にもかかわらず,塔矢アキラは,小学生の頃にヒカルに憑依した藤原佐為に完膚なきまでに敗北したことから,ヒカルを自らのライバルとみなし,彼を意識し続ける。匿名の悪戯メールに恋をしてしまうようなものだ。気の毒でならない。

 この構図は最終回にいたるまで変わることはなく,登場人物たちにはなんら救済は提示されない。
 ヒカルは今後も虚偽申告のレール上の人生を歩み続け,周囲は多かれ少なかれそれに歩みを揺らされるのだろう(アキラの,同年代の他の棋士たちへの態度を思い起こしてみよう。本来,佐為抜きなら,ヒカルもあのように扱われるのが妥当なのである)。
 心理学的に鑑みれば,ヒカルは遅かれ早かれ精神状態に変調をきたすだろう。早めにカウンセリングを受けることをお勧めしたい。

 今,ふと思い当たった。
 『ヒカルの碁』は,『ドラえもん』と構図的には実によく似ているのだが,野比のび太には,ドラえもんがいかにサポートしてみせてもそれがのび太本人の成長を示しているわけではないことを把握し,のび太を叱咤してくれるママがいる。のび太の将来もかなり心配ではあるが,ヒカルのそれほど陰惨なことにはならないだろう。

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