『ほんとにあった怖い話 裏観光ガイド心霊スポット特集』 朝日ソノラマ ASコミックス
【一応全部はがしたよ】
リバイバルブームである。たとえばシルヴィ・バルタンのベストアルバムが売れる。というか,洋楽CDの棚を見ればいにしえのミュージシャンのベストアルバムだらけである。
そのこと自体は別に悪いことではない。夏目漱石や三島由紀夫の作品が手に入らないような時代がやってきたら,それこそ問題だ。
問題は,新しい時代をになうミュージシャンが登場しているかどうかということだが,それについては正直よくわからない。大物が出てきていないのではないか,と感じているのは事実だが,それは単に昨今のウェイブにこちらが対応できていないだけかもしれないからだ。
マンガも,リバイバルが盛んだ。
マンガ文庫の定着によって,雑誌掲載から単行本,せいぜいたまに豪華本,という循環しかなかったものが,古い名作を再度店頭に並べる仕組みが用意された感じである。たとえばここしばらくの間に書店に平積みされたものの中には,『ちかいの魔球』『柔道賛歌』『ひとりぼっちのリン』『七つの黄金郷』などの過去の名作がある。いずれも,近年は入手が難しく,とはいえ高額な古本を探し出してまでは,といったレベルの作品ばかりである。
文庫サイズで緻密なタッチを味わえるか,といった点はさておき,こうしてさまざまな作品が発掘されることで多少なりとも読者の層が広がったり,現在の作家がインスピレーションを得たりすることは期待できるのではないか。
最近は,このマンガのリバイバル,リサイクルブームに,さらに新しいチャンネルが加わっている。それが主にコンビニエンスストアの店頭に並ぶA5サイズ,糊綴じのコミック冊子である。要するに旧作をチープな作りで安く(300円代~)販売するというもの。流通のルールはよくわからないが,雑誌コードが付いているところをみると雑誌として期限を設けてコンビニに卸し,返本は即断裁なのだろう。つまり制作費を抑えるだけでなく,単行本と違って在庫リスクを負わないわけである。
月単位なのか週単位なのかはわからないが,雑誌のサイクルだとすると,いつまでもコンビニ店頭に並んでいるはずはない。各社,すでに相当さまざまな作品を投入しているようで,全貌となるとおよそよくわからない。著名な作品の,それも面白いところを切り取るような発行をして,出版物というよりはまったくのマーケ商品である。
もちろん,読み手にとっては,それが面白ければどのような経路で販売されようと知ったことではない。値段,サイズの手ごろさもあって,手持ちの本に倦んだ帰りの通勤電車用にコンビニで無造作に購入したりする。それは『あずみ』であったり『アストロ球団』であったり『Papa told me』であったり,極端な場合は『哭きの竜』や高橋留美子の作品集のように,自宅の棚を探せば単行本を所有していることがわかっていても,時間つぶしとばかり買ってしまったりもする。
問題は,うっかり前後編の片割れを買ってしまった場合,もう一方も入手できるとは限らないことだ。原哲夫『公権力横領捜査官中坊林太郎』など,上巻を購入してしまったために,その続きが気になってしかたがない。しかし,雑誌扱いだけに紀伊国屋BookWebなどにも在庫はないし,そもそも単行本を探してみようというほどの作品でないのもまた事実……。
そんなこんなで,今夜は朝日ソノラマの心霊体験コミック集『ほんとにあった怖い話 裏観光ガイド心霊スポット特集』を購入してきた。遅い夕飯を食べながら,先ほど読了した次第。
この手の心霊マンガオムニバス本の面白さは,どうにも絵の下手なのからけっこう巧いのまで,さまざまなマンガ家によってさまざまな「恐怖」が描かれることである。たとえば,血まみれの女がアップになっても,それはかならずしも怖くはない。むしろ,そぼふる雨の中,車の後ろにしゃがんでいる霊のほうがなにか「危ない」ものが感じられたりするものだ。あるいは,血まみれの女が振り向く際,首をやや剣呑な角度で描き,そこに「ぐるん」と効果音を付け加えるだけでそれなりに「死体」感が増す,といったテクニックなど。
今回は,巻頭に並ぶ霊能者・寺尾玲子モノで,心霊スポットで霊を「拾う」,そこを再度たずねて霊を「はがす」という言い回しが登場人物たちの中ですんなり日常化している気配なのを興味深く読んだ。
「とりあえずそいつは元の場所に戻した 一体ずつ確認しながらはがしていくの」
「ここで二体目を拾ってる これも置いてくね」
「この交差点だよ 元凶である奴を拾ってるのは──」
「たぶんこれが最後だね 一応ぜんぶはがしたよ」
こんな具合に抜き出してしまうと,いやはや何の会話であることやら。
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