『剣豪 その流派と名刀』 牧 秀彦 / 光文社新書
【剣豪にとって剣術がスキルなら,日本刀はツールであろう。】
「あらすじではなく,自分の思ったこと,感じたことを書かなくてはいけません」というのは,小・中学校を通して読書感想文の指導として何度も言われてきたことだ。そのためか,いまだこうして趣味の書評を書いていても,ただタイトルと内容紹介だけですますとまるで悪いことをしているかのように後ろめたい思いにかられてしまう。ついつい余計なことを書きつらねては書評を長くしてしまうのはそのせいでもある。
しかし世の中には,評者の狭い了見に基づいた感想などより,ただ内容を端的に紹介したほうがよほどその価値を明確にできる本というものもある。本日取り上げる『剣豪 その流派と名刀』もそういった本の1冊だろう。
本書は『図説 剣技・剣術』など,剣術や日本刀についての書籍を次々とものしている著者が,刀を扱うための“スキル”たる剣術流派と,“ツール”たる名刀を紹介するものである。取り上げられた流派は塚原ト伝の新当流,薩摩国の示現流,宮本武蔵の二天一流,佐々木小次郎の巌流,現代剣道のルーツとも言われる一刀流,柳生十兵衛を輩出した柳生新陰流,池波正太郎『剣客商売』の父子の無外流,千葉周作の北辰一刀流,近藤勇の天然理心流など五〇。刀鍛冶は正宗,村正,孫六,虎鉄,童子切安綱などやはり五〇。
随所に挿入された
免許皆伝
本当の「真剣勝負」とはどのようなものか?
誰も教えてくれなかった「峰打ち」の真実
日本刀のメンテナンス
などのコラムも剣技,剣術にうとい者には新鮮だ(日本刀の手入れで剣豪がポンポンと刀を叩く,あのタンポの正体がやっとわかった)。また,流派,名刀を取り扱った作品として,小説のみならず,映画,コミック作品まで自在に紹介するフットワークも軽快である。なにしろ井上雄彦『バガボンド』や小池一夫『子連れ狼』あたりまではともかく,渡辺多恵子『風光る』まで取り上げられているのだ。
« ですます調のファンタジー 『伝七捕物帳』 陣出達朗 / 光文社文庫 | トップページ | ノートPC購入に向けての雑感(烏丸は電気手帳の夢を見るか) »
「時代・歴史」カテゴリの記事
- 真夏のホラー特集 その6 『耳袋秘帖 南町奉行と百物語』 風野真知雄 / 文春文庫(2025.08.28)
- 妙なものを見たようだな 『耳袋秘帖 南町奉行と逢魔ヶ刻』 風野真知雄 / 文春文庫(2024.08.26)
- 巡りあひて 『紫式部と藤原道長』 倉本一宏 / 講談社現代新書(2024.07.04)
- Vorne und Hinten 『ヒトラーと退廃芸術 〈退廃芸術展〉と〈大ドイツ芸術展〉』 関 楠生 / 河出書房新社(2024.06.03)
- 仕え甲斐がありますな 『新九郎、奔る!(16)』 ゆうきまさみ / 小学館 ビッグスピリッツコミックススペシャル(2024.04.18)
« ですます調のファンタジー 『伝七捕物帳』 陣出達朗 / 光文社文庫 | トップページ | ノートPC購入に向けての雑感(烏丸は電気手帳の夢を見るか) »


コメント