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2002/07/22

怖さひりひり 『新耳袋 現代百物語 第七夜』 木原浩勝・中山市朗 / メディア・ファクトリー

Photo_4【ふみひこ は だめ】

 怖い話は聞くのも話すのも大好きで,かつて,とあるパソコン通信ネットの会議室でオンライン百物語が始まったときには,喜んで夜毎踊り明かしたものだ。インターネットが普及するよりずいぶん前の話である。
 ただ残念なことに,猫も杓子もインターネットの昨今と違い,当時は参加者が決して多いとはいえず,季節の移ろいに伴ってだんだん怪談のアップ数が減り,感想や雑談はにぎわったものの結局百話に満たないうちに会議室ごと沈んでしまった。
 不思議なのは,日々怪談の題材を求めていると,勘が冴えてくるというか,うっかり呼んでしまうというか,ほうっておいても怪しい気配がにじり寄ってきたことだ。もともとは霊感が強いとかいうほうではないのだが,当時はいくたびかおかしな気配を感じたり,つじつまの合わない思いをしたりしたものである。
 今でも残念に思うのだが,このオンライン百物語,百話めがアップされていたならはたして何が起こったのだろうか……。

 それはさておき,独特のひりひりした怖さで知られる『新耳袋』の新刊である。
 最近は文庫,コミック,映像化など,メディア展開もにぎにぎしい『新耳袋』だが,凡百の怪談集と異なるのは,このシリーズがいかにもな「心霊」モノ,あるいはセミプロの手による創作モノでない,市井の「不思議」体験をヒアリングして集めた点にある。いわば,現代の「遠野物語」なのだ。
 したがって,その中にはもちろん,友達の兄姉の友達とやらによる作り話,いかにもどこかで語られていた怪談のリメーク,あるいは話者の単なる思い込みや夢とおぼしきもの,などまで含まれているようにも思われるが,逆に,なんとも説明のつかない,得体の知れない話も少なくない。

 たとえば,新刊の第七夜には,次のような話が掲載されている。
 中古の一戸建てを購入すると,壁が妙に厚い。大工を呼んで調べてもらうと,なぜか壁の中に食器棚が塗り込められ,平皿,深皿,グラスまでが揃っていた……。
 これは,怖い。前の住居者は,いかなる意図で食器棚を壁に塗り込んだのか。その背景にはいかなる事態があったのか……。
(ただ,この話には,ちょっと気のきいたオチが用意されており,話としてはよく出来ている分,一種出来すぎともなってしまっている。語りが巧すぎると,かえって作り話に見えやすい,ということである。)

 一方,旅館で寝ていると歯ぎしりの音が,とか,天井から女の手が,とかいった話は一つ一つはそう怖くない。閉めたはずの押し入れが気がつくと少し開いているという話がすでに山岸凉子の単行本のタイトルとなっているなど,よくある怪談の一パターンと化したものが少なくないためである。

 いずれにしても,部屋の体感温度を確実に5℃は下げてくれる本シリーズ,寝苦しい夜にはお奨め。
 今回はどれがとくにということではないが,全体に,ここ数冊の中では怖い印象がある。テナントの入りの悪いビルの屋上に揺れていたものとか,回っている皿がすべて空で,客が全員席に座ったままうつむいている回転寿司屋だとか……。

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