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2002/04/08

シリーズ 怖い本 その六 『ティッシュ。』 坂辺周一 / リイド社 SPコミックス

23【お兄ちゃんの お嫁さんに なりたいんだろう?】

 ちあさをずっと女手ひとつで育ててくれた母親が,大学教授と再婚することになった。だが,新しい家庭には……。
 本書は,一言でいえば,ストーカーに追われる少女の話である。

 通勤路からは離れているためそうたびたびは立ち寄れないが,なかなかシブめの棚の揃えと,平積みの扱いにさりげなく工夫をこらすことでお気に入りの郊外型書店がある。推奨コミックには「見本」とシールを貼って立ち読みを許可する,話題作には簡便な書評を記した手書きポップを立てるなど,一歩間違えるとわずらわしいが,趣味が悪くなければ役立つ,そういったサービス。
 この『ティッシュ。』に用意されていたシンプルなポップは,こうだ。「かなり,気持ち悪いです」

 確かに17歳の少女にとって,母親の再婚先に30歳近いストーカーがいたら,これはたまらない。おまけに敵はずんぐりした巨体で,無口で,ターミネーターのようにタフで,獣医の卵だから麻酔薬さえ持っている。それが顔を洗う自分の背後に黙って立っているのだ。生理用具を捨てたゴミ袋をあさるのだ。そんなのに追われたら,主人公でなくとも悲鳴をあげるだろう。

 残念なのは,余計なものを詰め込みすぎたことだろうか。
 主人公と母親の葛藤,ストーカーの父親のジレンマなどを描き,厚みのある人生ドラマに仕立て上げようとしたのだろうが,いずれも中途半端なまま,かえってサイコホラーとしての純度を薄めているように思える。
 また,雑誌連載時のお色気サービスということもあるのだろうが,主人公がわりあいあっけなく裸にされてしまうのも,ホラーとしてみればマイナスだ。ストーカー氏の「いやがらせ」が主人公だけでなくその母親や周囲の者にまで向かうのはかえって焦点がぼけてしまうような気がする。

 ストーカーを扱うホラーの恐怖は,まず,ごく普通の,むしろ好感のもてる人物が,だんだんおかしな言動を見せる,その違和感,微妙な色合いの狂いにある。次いでポイントとなるのは,相手がストーカーであることが明らかになってからも,周囲の者にその恐怖が伝わらないことだ。ストレートな恐怖とはまた別の,婉曲で,胸の奥にじわじわ食い込んでくるような嫌悪感。
 たとえば,(本書とは少し離れるが)寝室に押し入って無理やりレイプしようとする直接的な暴力ではなく,朝目覚めると枕元の小物の位置が整えられていたり,パジャマが新しいものに変わってしまっているような恐怖。
 しかし,本作はわりあいあっけなく,直接的な性描写や暴力,悲鳴,絶叫シーンに走ってしまう。このあたり,B級のサガといえばいえるか。

 もう一点,途中で掲載誌が廃刊になって他誌に移るなど,作者にとって思うようにならない面もあったのだろうが,タイトルの「ティッシュ」は,実はストーリーにはとくにかかわらない。要所要所で使われるのはティッシュではなく,○○○である。その使い方はなかなか,いや非常に見応えがあるのだが,ただ,タイトルに○○○では色気もヘチマもないものなぁ。

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