スザンヌ・ヴェガについての断章
昨秋に発売されたSuzanne Vegaの6作めのスタジオ録音アルバム‘SONGS IN RED AND GRAY’は,初期のSuzanne Vegaを思い起こさせるアコースティックな音がとても好もしい。
あるべき声の波が遠くに引くことによって,かえって歌詞の一言一言が気になるような,そんな彼女らしさが久しぶりによく現れているように思われる。
Suzanne Vegaがブレイクしたのは2ndアルバム‘SOLITUDE STANDING’のLUKAやTOM'S DINERのヒットによると言われ,実際この2曲はラジオやTV CFでよく耳にされたわけだが,同じ2ndアルバムの8曲め,LANGUAGEこそは比類なき作品ではないかと個人的には思っている。流れない言葉,消えてしまう言葉を歌うアコースティックギターを中心とした複層的なアレンジが理屈の縦糸,感性の横糸で音のタペストリーを虚空に結ぶ。
当時毎週欠かさずチェックしていたPeter BarakanのPopper's MTVのエンディングで流れていたのを初めて聞いたときには,ほんのサワリだけで体中の血液が繻子ごしに洗われるような気がしたものだ。
その後の何枚かのアルバムも,ずっとつきあってはきたが,2ndアルバムほどの思いはなかなか味わえずにいる。
このあたり,当たり外れの多い元PoliceのStingと少し似ている。
そういえば,少し嗄れた,だがハスキーというほどではない声,歌唱力があるんだかないんだかよくわからない,だが決してヘタなわけではなく淡々と難しい歌を歌い上げるところ,アコースティックな音を中心にしているようで電子的なアレンジもいとわない音楽性など,StingとSuzanne Vegaには似たような点が少なくない。初期のヒットにRoxanne,Marlene On The Wallと娼婦を歌う歌があったり。声や歌い方にどこか微かな「はすっぱ」さが匂ったり。少しばかりこじつけがすぎるかもしれないけれど。
多分,Suzanne Vegaは僕の欲しいものを全部満たしてはくれない。言葉は流れず,音は消えてしまう。それでも,どこかに残るものはあるのだ。多分。きっと。
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