フォト
無料ブログはココログ

« 粘土造りの少女マンガ 『あなたがほしい je te veux』 安達千夏 / 集英社文庫 | トップページ | 本の中の迷画たち 『殉教カテリナ車輪』 飛鳥部 勝則 / 創元推理文庫 »

2001/12/19

[非書評] 文庫とはいえ表紙は顔,顔は命 ──『裸婦の中の裸婦』(文春文庫)

061 そんなにこき下ろすのならいったいどうして安達千夏『あなたがほしい je te veux』を取り上げたのか,いや,そもそもそんなに悪しざまに言うならなぜ「すばる文学賞」作品を手に取ったりしたのか,ということだが,これにはそれなりに理由がある。
 書店店頭にて,カラスはあきれたのである。嘆いたのである。

 添付画像ファイルをご覧いただきたい。それから,少し下に画面をスクロールしていただきたい。
 いかがだろう。

 『裸婦の中の裸婦』(文春文庫)は,澁澤龍彦と巖谷國士の共著(二人とも旧字だらけで,入力するだけで一苦労だ),古代ギリシアの両性具有像(小池真理子の文庫『恋』の表紙にも使われている,あのヘルマフロディトスだ)からバルチュス,クラナッハ,ブロンツィーノ,百武兼行,デルヴォーなど古今の名画,そしてヘルムート・ニュートン撮影のシャーロット・ランプリングのヌード写真,四谷シモンの人形にいたるまで,12点の裸婦像からさまざまなエロスのあり方を若い女性との会話体で綴ったビジュアル文庫。
 若いころの晦渋さ,攻撃性を削り取り,枯れた,だがつややかさを失わない澁澤の語り口,そして澁澤が病に倒れたあとはその友人でシュルレアリスムの書籍で知られる巖谷國士がその連載(最後の3編)を引き継いでまとめたという,実に風雅かつ手応え豊かな1冊なのである。

 この「くるくる」で1年ほど前「本の中の名画たち」という小シリーズを立ち上げたのは,実のところ,この『裸婦の中の裸婦』にたどり着きたいがためだった。
 それが果たせなかったのは,今,澁澤を語るには少しそぐわないものがあるためだ。澁澤の価値が減じたわけではないが,自分の側がシュルレアリスムだの黒魔術だのプリニウスだの思考の紋章学だの,そういったオブジェとは別の地平にいるようで,最近も『悪魔の中世』『城 夢想と現実のモニュメント』『幻想の画廊から』となぜか立て続けに文庫化が進むのを読み返すのが精一杯,といった感じなのである。

 澁澤についてはいずれまた取り上げるとして,『あなたがほしい je te veux』だ。
 著者・安達千夏を,カラスは気の毒に思う。文庫本というのは,新人作家にとって,やはり1つの夢であるのには違いない。彼女が今後何冊本を上梓できるかはしらないが,初めての文庫本の表紙がいくら本文中にポール・デルヴォーが登場するからといって,ほんの数年前に発行された他社の文庫とそっくり似た構図ってのはないだろう。装丁者と編集者は『裸婦の中の裸婦』を知らなかったのだろうが,だとすると怠慢だ。
 しかも,『裸婦の中の裸婦』が白地にデルヴォー,背表紙は赤に白抜きの文字,とすっきりした中にも1つのフォルムを見せるのに対し,同じようにデルヴォーを使いながらこの色遣いはあんまりじゃないかと思うのだが……。

« 粘土造りの少女マンガ 『あなたがほしい je te veux』 安達千夏 / 集英社文庫 | トップページ | 本の中の迷画たち 『殉教カテリナ車輪』 飛鳥部 勝則 / 創元推理文庫 »

小説・詩・文芸評論」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 粘土造りの少女マンガ 『あなたがほしい je te veux』 安達千夏 / 集英社文庫 | トップページ | 本の中の迷画たち 『殉教カテリナ車輪』 飛鳥部 勝則 / 創元推理文庫 »