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2001/10/12

時について 二題

 
  昔は
  風が私を吹き上げた
  私は葦のように弱かったけれど
  葦笛のように風を歌うことができた

  夕暮れにはブヨの柱が立ち
  蝙蝠が帰り道の空に柔らかな弧をかいた

  昔
  あなたは今ほど美しくはなかった
  子どもっぽく
  いつも笑っていた
  愛することはできなかったけれど
  誰よりも好きだった

               (光る風)

    その庭に出て
    ほかにすることもなく
    午後は本を読んで過ごした

    疲れた目を閉ざしながら
    いい本だと心から思った
    いい本だとは思ったけれど
    二度と読むことはあるまいとも思った

    実際その本は二度と開かれなかった
    私は黒土の下に静かにうずめられ
    白い本が墓標のようにそっと重ねられた

                 (閉ざされた庭)

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