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2001/09/22

独身者の機械 その四 ジョナサン・スウィフトの結婚

Photo_2【「スウィフトとヘスタは実の兄妹だ」という噂を流したのはスウィフト当人だ,という噂】

 『不思議の国のアリス』の作者ルイス・キャロルは,少女たちとのリアルなセックスの代わりに,言葉遊びや論理のアクロバットに没頭したのではないか,ということを述べた。もちろん証拠があるわけではない。邪推と言われればそれまでである。
 だが,文学史のところどころには,これとどこか似た匂いのする,奇妙な記録が散見する。

 今夜取り上げるのは,『ガリバー旅行記』の作者ジョナサン・スウィフト。そう,あの,小人の国(リリパット国),巨人の国(ブロブディンナグ国)を訪ねた船乗りの物語の作者だ。ラピュタ,ヤフーという言葉の発明者もこのスウィフトである。

 前もってお断りしておくが,烏丸は『ガリバー旅行記』を(ジュブナイルを除いて)きちんと読んだことがない。完訳本はぱらぱらめくったところで,放り投げてしまった。さらに,これからご紹介する逸話も,あちらこちらで「~と言われる」「~という説もある」と書かれたものから適当に抜粋したもので,根拠があるのかと聞かれればきっぱり「知らない!」とお答えするしかない,そんな程度の話である。

 ジョナサン・スウィフトは,1667年にイギリス,ダブリンで生まれた。父親は彼が生まれる前に死に,母親にも見捨てられて乳母の故郷で孤児同然に育つ。のちのロンドンで学んで聖職者となり,一方で風刺的な作品を発表し始める。司教になることかなわず,ダブリンに引きこもって『ガリバー旅行記』(1726年)などを執筆,1745年,精神を病んで死去。

 彼は29歳のとき,生涯愛し続けるヘスタ・ジョンソン(愛称ステラ)と知り合う。このとき,ステラは15歳(別の資料によると,スウィフト20歳,ステラ8歳のとき,とある)。
 スウィフトは,ステラと相思相愛の仲にありながら,決して手を触れず,彼女と会うときは必ずステラの乳母を同座させたという。のちにステラの精神を安定させるために,名目だけの結婚式を挙げたとされるが,それにもかかわらずステラは死ぬまで自分のことを「老処女」と呼んだ。

 かと思えば,ステラと出会ったのとほぼ同じころ,スウィフトはジェイン・ウェアリングという女性に求婚している。そして,4年後にやっとジェインが同意したとき,彼は「君に僕との結婚生活が耐えられるものか」と絶縁状を送りつけている。

 のちには,エスタ・ヴァナムリー(愛称ヴァネッサ)という女性と知り合っている。ヴァネッサはスウィフトに一途な愛を訴えるが,ステラとの三角関係に心身ともに消耗し,胸を病み,スウィフトがステラと結婚式を挙げると力尽きて死んでしまう。
 スウィフトは手紙の中でステラを少年のようにYoung Sirと呼び,ヴァネッサを両性具有者(ヘルマフロデイトス)のごとく描いている。

 ……くどいようだが,どこまで本当のことだかはわからない。
 ただ,ここに見受けられるのは,異様なばかりに女性を意識し,そのくせ,肉体的接触を極端に嫌悪する精神だ。「フロイト風にいえば,異性との肉体関係によるエロティシズムの成就に対する根深い抑圧,つまり強烈なナルシシスムの傾向があったことが,そこに暗示される」(高橋康也)。

 スウィフトの書いたものとキャロルの書いたものとの間に見受けられる共通点についても,少しだけおさえておこう。
・ガリバーは訪ねる国によって巨人扱いされたり小人扱いされたりし,アリスは飲む薬によって巨大になったり小さくなったりする
・スウィフトがステラに宛てた手紙,キャロルが少女たちに宛てた手紙の中には,アルファベットを重ねたりはぶいたりした一種の幼児語が用いられている

 そして,スウィフトもキャロルも異常なばかりの潔癖症,整理好きだった。これは,肉体的,性的なものへの嫌悪と結びついていたのかもしれない。

 そして,少女との結婚といえば……。

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