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2001/09/10

独身者の機械 そのニ 『少女アリス』 沢渡 朔 / 河出書房新社

68【あなたにも,チェルシー】

 というわけで話題がたとえばミリオン出版『リトル・プリテンダー』,石川洋司のソフィー,清岡純子のプチ・トマト,SCORPIONSのVIRGIN KILLERジャケ写……と続けば,一部の方々にはさぞや喜んでいただけるのだろうが,あいにくロリータヌード写真集について書くほどの知識もストックもない。ソフィーは新書サイズのを購入した覚えがあるな,とか,せいぜいそんな程度。

 そもそも,1980年頃に全盛を誇ったロリータヌード写真集の大半は,所持することが剣呑なわりにはどうも焦点が定まらず,楽しくない。もともとは剣持加津夫あたりがヌード写真の可能性を拡大しようと始めたものらしいが,のちに性器が無修正で見られると舞い上がった買い手によってブームに,が実情だったのではないか。要するに,ヘアさえ写っていれば○○や**の裸でも喜ぶかこのオヤジ,と似たり寄ったり。
 もちろん,買い手には真性の幼女フェチも含まれていたのだろうが,このロリータコンプレックスとか幼女嗜好とかいうものの正体がはっきりしない。「大人の女ではもう全然ダメ」なのか「小さくて可愛いのがタマラナイ」程度なのか,そのあたりが判然としないし,ロリコンという言葉のもととなったウラジミール・ナボコフの『ロリータ』を読み返しても,主人公ハンバート・ハンバートは当のロリータと再三セックスを営み,妊娠さえさせてしまう。幼女というよりたまたま年齢の低いマノン・レスコーといった感じだし,ハンバート・ハンバートにも病的な印象は希薄である。
 ましてやここ数年のいくつかの事件のように,単に大人の女性とコミュニケートできない,社会性に未成熟ないし欠損があるとしか思えない輩が自分より弱い相手として少女,幼女を弄ぶ,というのにいたっては最低かつ論外である。

 露出度を競い,法令改正とともに消えていったロリータヌード写真集群の中で,他と一線を画す『少女アリス』は,写真家の沢渡朔がイギリスで出会った8歳のモデル,サマンサをフューチャーし,『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』に重ねた幻想的な世界を展開したもの。ヌード写真は数葉にすぎず(現行の法令下ではそれでも十分問題になりそうだが),全体としては「アリス」へのオマージュ,工芸品の色合いが強い。
 サマンサ=アリスが日本で最初に公開されたのは,1973年10月の西武百貨店「不思議の国のアリス」キャンペーン。週刊ポスト誌(1973年47号)がそれを受けて巻末グラビアに写真を掲載した。
 同年12月に河出書房新社から発行された写真集には滝口修造と谷川俊太郎が詩を贈り,ルイス・キャロルの断章や手紙を高橋康也が訳し,帯には種村季弘が献辞を添えている。
 さらには青土社「ユリイカ」誌がサマンサを表紙に登用し,ことに1974年7月臨時増刊「オカルティズム」はその内容とあいまって独特の雰囲気を醸し出した。
(のちにサマンサは日本のお菓子のテレビCMにも登場した。「あなたにも,チェルシー」というのがそれである。)

 要するにサマンサは,1970年代のある時期(それはたまたま何度目かのシュルレアリスムブーム,ルイス・キャロルブームと期を一にしていたのだが),この国のシュルレアリストや文学的オカルトファンの間で由緒正しき彼らの「アリス」として扱われたのである。それはつまり,彼らがビクトリア朝期の一数学者の残した作品を,単なる子供向けの童話でなく,自らと同じベクトル,同じ臭いを発する装置として捉えていたことの証しにほかならない。

 では,ルイス・キャロルが彼らを引き寄せた要素とは,いったい何だったのだろうか。

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