« [雑談] アルバムのお遊びあれこれ | トップページ | 科学者も人の子 『科学史の事件簿』 「科学朝日」編 / 朝日選書 »

2001/08/09

[鎮魂] 原爆の日によせて 『いしぶみ』 ポプラ社文庫,『チョウのいる丘』 那須田稔 / 講談社青い鳥文庫

 今日9日は長崎原爆忌。
 6日の広島原爆忌に,クローズドな掲示板で次のようなことを書いた。

----------------
「語り継ぐ」という言葉はよく聞くが,以前に比べると原爆体験者の言葉や写真がメディアに載る機会がなんとなく少ないような気がする。
パッと思い浮かぶのは中沢啓治『はだしのゲン』だが,あれはとっくに連載が終わっているし,絵にクセがあってちょっとツラい。
ごく普通のドラマの中などで,登場人物が被爆体験者,といった設定も見かけない(たとえば,刑事モノで犯人が被爆者というのは今ではもう難しい)。
56年も前の話だから,やむをえないことなのかもしれないけど。

また,8月になるとお約束のようにテレビで関連ニュースが流れるが,これも昔に比べるとその酷い状況をリアルに語る,という感じではない。
沢山の人が死んだという設定だけ語られて黙祷してオシマイ,な印象。

昔,多分1968年か69年,広島の爆心地の小学校の生徒全員がどうなったかを1人1人追う,というテレビ番組があって,当時の写真を背景に女性ナレーターが淡々と読み上げる,という構成だったのだけれど,これはキツかった。
「6年4組,木村静江。2年前に家族で大阪から疎開。祖母の実家から学校に通う。6日は校庭で被爆。右半身に一面のやけどを負い,担任の藤田先生が抱きかかえて校舎の中に運びこむが,『お母ちゃん』とだけ言い残し,30分後に死亡。藤田先生も3時間後には死亡」
みたいなのを,何百人分も静かに読み上げていくのだ。
小学生だった僕は,チャンネル変えることもできず,呆然と見入っていた。
最後のシーンは,それら読み上げられた膨大な紙の1枚1枚に火がともり,ぱあっと燃え上がる。
----------------

 すると,これに小学校教師のA氏からコメントが付いた。それは「いしぶみ」という番組ではないか,というのだ。本も出ていると。
 以下,A氏のコメントを一部引用させていただく。

----------------
小学校三年生のときに担任の先生が、夏休み前にこの本を朗読し、あまりの内容に胸がしめつけられました。子ども心にも感じるものがあったのか、親に頼んで近所の本屋で取り寄せてもらいました。

現在は私が教える側になり、毎年、学級文庫には必ずこの本を入れ、夏休み前には読み聞かせております。
--------------------

 驚いた。30年以上前にたまたま見たテレビ番組のタイトルが,今になってわかるとは。

 Webで「いしぶみ 原爆」で検索すると,1968(昭和43)年に広島テレビで放映されていることがわかる。出演(ナレーション)は杉村春子。
 昭和20年8月6日午前8時15分,広島二中(当時)の生徒たちは広島市本川の土手(現平和公園の近く)で作業従事中に被爆した。1年生322人と4人の教師は全滅。番組は,全員の顔写真とともに死に至る過程を淡々と,克明に,読み上げる。

 本はポプラ社文庫で手に入る。正直,記憶が強烈にすぎて,今読めるとは思えない。
 だが,子供たちには必ず読ませたい。いや,読ませなくてはならない。Aさん,感謝。

 それにしても,細かな記憶違いはともかく「1968年か69年」とはよく覚えていたものだ。
 調べてみると,当時の課題図書にやはり小学生向けの『チョウのいる丘』(那須田稔)というのがあり,その発刊が1968年。こちらは被爆二世の少女が白血病で死んでいく話なのだが,おそらく夏休みに『チョウのいる丘』を読み,さらにテレビで『いしぶみ』を見て,原爆の恐ろしさ,悲しさが意識に焼きついたのだろう。
 『チョウのいる丘』は講談社青い鳥文庫で再販されている。現在は絶版。

« [雑談] アルバムのお遊びあれこれ | トップページ | 科学者も人の子 『科学史の事件簿』 「科学朝日」編 / 朝日選書 »

時代・歴史」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« [雑談] アルバムのお遊びあれこれ | トップページ | 科学者も人の子 『科学史の事件簿』 「科学朝日」編 / 朝日選書 »