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2001/07/29

知ってるつもり?! 『遥かなる影』 カーペンターズ

Photo_3【They long to be...】

 カーペンターズといえば「さわやか」「美しいコーラス」「バカラックの秘蔵っ子」それにせいぜい「多重録音」といったところで,硬派な議論はあまり見かけない。というより,カーペンターズがヒットチャートを彩った当時,カーペンターズのシングルを買い求める男は,プログレファン,ヘビメタファン,いや四畳半フォークな連中にさえ軟弱者扱いされたのではないか。
 だが,ときどきふと,「さわやか」だけで語り終えてよいのか? という気にならないでもない。実は何か裏にどろどろしたものはないのか,という疑念である。そしてそのどろどろのカケラでも発見できないかとCDを皿受けに乗せてみる。何もない。いや,逆にこの,どろどろしたものの徹底した欠落は,それはそれで何か怖いものなのではないのか。

 カーペンターズのデビューシングルは1969年の暮れに発売された「涙の乗車券」。言うまでもなくレノン&マッカートニーの作品のカバー(歌詞の"she"が"he"に置き換えられている)。翌年,2枚目のシングル「遥かなる影(Close to you)」が全米1位になり,あとはスター街道まっしぐら,といった感じだった(ちょうどジャクソンファイブと同時期で,シングル発売のたびにビルボードホット100を争っていたような記憶がある)。
 1970年といえば,日本では三島割腹,よど号ハイジャック,マンガを見ても「アシュラ」に「ファイヤー!」に「光る風」。アメリカでもベトナム戦争,ヒッピー,ドラッグなど,何か世界中が問題意識で煮詰まっていたようなころ。ロックシーンでもビートルズが解散,ハードロック,プログレッシブロックが頭角を現していた。
 そんな中,カーペンターズは登場し,出来すぎた御伽噺のような清潔でさわやかな愛の歌を連発する。

 何も,おかしくはない。いや,どこか,へんだ。
 もちろん,当時,ほかにポップミュージシャンがいなかったわけではない。たとえばやはりさわやかなイメージやオーケストレーションで日本でも人気のあったオズモンズやポール・モーリアも高い人気を誇ったころだ。
 しかし,ヒットチャートをにぎわすポップミュージシャンは,通常,ポップミュージックという箱の中での存在に過ぎない。カーペンターズは,それに比べると妙に浸透しているようにも見えた。明らかにビートルズのような精神性,革新性はないはずなのに,ビートルズのような受け入れられ方とでもいうか。うまく言えないが。
 うがった見方をすれば,ぎとぎとした時代へのカウンターとでも言うか。CDのライナーノーツによれば,日本でカーペンターズ人気が沸騰するのは石油ショックとほぼ同時期だったようだし,さらに後にイギリスで人気が出たときには,不況と失業でパンク全盛のころだったようである。カウンターというよりは,ヤシガラ活性炭的とでも言おうか。社会の問題意識が煮詰まった時代に,それを吸収するうつろな箱としての機能。

 だが,それを吸収したヤシガラはどうなるのか。
 そう思うと,あれほどのクリーンな印象でありながら,「カーペンターズ,兄弟で結婚?」と音楽雑誌に報道されたり,カレンが拒食症による心不全で亡くなる(32歳),というかなり悲劇的な終末を迎えることになったりしたこともわからないではない。ジュリー・アンドリュースではなく,ジャニス・ジョプリンの側にいた,とでも言うか。
 今,「遥かなる影」を聞きながら考える。カレン・カーペンターは,うまくすれば幸福な老後にたどり着けたのだろうか。それとも……。

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