知ってるつもり?! 『マッドマン』 エルトン・ジョン
【世界の森繁久彌】
もう何年も前だが,ロッキングオンか何かに「エルトン・ジョンのファンっていったいどんな人なんだか」という記事が載って,苦笑いして読んだ記憶がある。とても有名なのはわかるけど,心からのファンがいるとはとても思えない,そんな書き方だった。
確かに,最近のエルトン・ジョンは,ベルサーチやダイアナ元皇太子妃の葬儀で泣き崩れて「あたしなんかがねえ,生き残ってねえ」と森繁久彌やってる姿くらいしか思い浮かばない。
だが,テレビCMやドラマの主題歌として2,3年に一度はリバイバルヒットする「僕の歌は君の歌(Your Song)」(2ndアルバム『エルトン・ジョン(Elton John)』収録)の作られた1960年代後半から70年代前半にかけてのエルトン・ジョンは,叙情味あふれるピアノの吟遊詩人というイメージと天才的な作曲の才能で,それはもうカルトな人気を誇ったものだ。たとえば「僕の歌は君の歌」はバーニー・トーピンから詩を渡され,ピアノの前に座って15分でできた,と言われている。
『ホンキー・シャトー(Honky Chateau)』から7作連続全米No.1を獲得し,バラエティあふれるエンターテイナーエルトン・ジョンの最高傑作は『グッバイ・イエロー・ブリック・ロード(Goodbye Yellow Brick Road)』,というのがロック雑誌などでよく言われる定説だが,どうもばたばたした印象,おまけに2枚組と長すぎて(最近はCD 1枚にまとめられている)あまり好みではない。というか,エルトン自身が言うところの初期の"strings period"好きとしては,(セカンドアルバムは多少聞き飽きたこともあって)ここは一つ4thの『マッドマン(Madman Across The Water)』を押したい。
夜の高速をドライブするような切なさに満ちた「可愛いダンサー(マキシンに捧ぐ)(Tiny Dancer)」,ポール・バックマスターのアレンジが異様な高揚を誘う「マッドマン(Madman Across The Water)」,インディアン一族の悲劇的な最後を描く「黄昏のインディアン(Indian Sunset)」,アルバムの最後を締める小曲「グッドバイ(Goodbye)」などフェーバリットソングが並ぶが,中でも金儲けにしか興味のない小市民の死を歌う「リーヴォンの生涯(Levon)」は凄い。なめし皮のムチを振るうようなエルトン・ジョンならではの屈折したメロディ展開。アクの利いたヴォーカル,ピアノのタッチも彼らしい。
エルトン・ジョンはよく知らないが「僕の歌は君の歌」は好き,という方には,同様のメロディアスなチューンとして,2nd『エルトン・ジョン』の「ハイアントンの思い出(First Episode At Hienton)」,3rd『エルトン・ジョン3(Tumbleweed Connection)』の「遅れないでいらっしゃい(Come Down In Time)」,さらには出来が悪いからとずっとCD化されなかった映画「フレンズ」のサウンドトラックほか初期の佳曲がようやく2枚組CDにまとめられた『イエス・イッツ・ミー~レア・トラックス』から「四季のテーマ(Seasons)」あたりをお奨めしたい。恋や愛を歌うには,泣いたり叫んだりする必要はないのだ。
『マッドマン』といい,最後に並べた曲目といい,エルトン・ジョンのオーソドックスな評価としては癖がある選択とは思うが,エルトン・ジョンのヒット曲を他のミュージシャンが歌ったトリビュートアルバムで元ポリスのスティングが「遅れないでいらっしゃい」を選んでいたのには驚き,また嬉しく思った。考えてみれば,この,世にも難しい愛の歌(なのか?)を胸張って歌えるのは世界でもスティングくらいなのかもしれない。
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コメント
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みみりんさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。ずいぶん昔の書き込みですが、「マッドマン」というアルバムがいい、という気持ちは今もあまり変わっていません(しかし、エルトン・ジョン本人はいまだにヒットチャートで活躍しているらしい。すごいおっちゃんです)。
そうそう、
http://karasumaru.txt-nifty.com/kurukuru/2001/07/old02-1.html
のほうに書いた、ヤングミュージックショウの音源、ロンドン・ロイヤル・フィルと共演したものですが、最近、イギリスのほうでは海賊版CDが出ているようで、YouTubeで聞くことができました。実に懐かしい・・・
投稿: 烏丸 | 2016/10/01 02:13
はじめまして。エルトン・ジョンの長年のファンです。中学〜高校〜大学までエルトンのファンクラブの会員でもあったので、烏丸さんの文に、嬉しく思いました。(彼が最初の結婚をして、ショックでFCを脱退)
でも、「マッドマン」は持っていなかったのは不覚でした。宇多田ヒカルが、「Tiny dancer」をヒントにして朝ドラのテーマ曲を作った、と知り、改めてアルバム「マッドマン」を聴きたいと思いました。「TWO ROOMS」も改めて聴きます。
色々教えていただき、ありがとうございます!
投稿: みみりん | 2016/09/25 13:18