マスコミの誤報について 最終回 報道という名のバラエティショウ
このほか,コンピュータを扱った報道を見渡すと,実際,明らかな誤報,首を傾げざるを得ない記事が少なくない。というより,専門家が直接ペンを執った文章は別にして,ある程度突っ込んだ内容を記者がまとめた記事を見た場合,かなりの確立で奇妙な誤解や微妙なズレ,さらにいえばほのかな毒を感じることが少なくない(とくに,朝日新聞の「ネット」に対する悪意はかなり露骨だ)。
気になるのは,コンピュータを扱った記事の場合,比較的オープンな業界ゆえ事件の結果がしばらくして明らかになることが多く,そのために読み手から記事の内容チェックがしやすいのではないか,ということである。
そして,もし大手新聞社の記者の水準がコンピュータ関連記事にうかがえる程度のものしかないとしたら,それ以外の,記事の是非が明らかになりにくいジャンルの記事の内容の水準は果たしてどうなのか。たとえば,経済,金融,政治,外交……。
衰えたといえども大部数を誇る新聞の影響力はいまだ大きい。駆け出しの記者でも取材相手に「公器」として恫喝まがいのことを口にできるほどその権力は小さくない。ワイドショーや週刊誌とは次元の異なる,何かきちんとしたもの,確かなスジによる情報,といったものを想像する読み手もいまだ少なくないに違いない。
しかし,本当にワイドショーや週刊誌,スポーツ新聞とは違うのだろうか?
とりあえず,我々読み手は,インターネットという複合的な情報源を得た。従来は時間的にも金銭的にも容易でなかった複数の新聞の記事,通信社のナマの情報,場合によっては事件の当事者のナマの声に触れることすら可能になった。
2つの新聞の記事を読んで,もしその内容に違いがあるなら,どちらかは(あるいは両方とも)事実と異なっている可能性があるということだ。逆に,内容が全く同じなら,どこかからの,同じニュースソースからの(なんらかの意図のこもった)情報を引き写しただけかもしれない。
見抜くのは読み手側の義務なのである。
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……と書いて〆られるとなかなかカッコよかったのだが,知人から,昨日の書き込みの,顧客データをプリントアウトした銀行についてのご指摘をいただいた。
曰く,「プリントアウトは結果的にムダにはなったが,保険金と同じく万一に備えたリスクヘッジであり,ムダになるよう努力し,その努力がうまくいったということではないか。そもそも派手にプリントアウトを積み上げても預金全額から見ればたいしたコストではない。銀行の取り組み姿勢のパフォーマンスだったのではないか」(要約,烏丸)
うーん,磁気ディスク等への保存で十分なところを,紙に印字しないとアピールにならないという構造自体が前近代的な印象だったのだが,こうして指摘をいただくとどうも反論できない。
というわけで,新潮社から函入り著作集全35巻を発行する折には,昨日の書き込みの最後の段落は削除することにしたい……って,こらっ。
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