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2001/04/09

マスコミの誤報について その三 専門家という情報源

 昔のことだが,考古学の研究を専門とする知人が
「考古学については,新聞の派手な記事なんかあてにしてはダメだよ。どこの新聞も自分たちが親しい一部のセンセイの言うことばかり取り上げて,実証できてないようなことまで平気で載せてしまうのだから」
と苦い顔をしていたことを思い出す。どの新聞がどの大学のどの研究室の,ということまで詳しく説明していただいたのだが,申し訳ないことに詳細までは記憶がない。知人の懸念は,最近の旧石器発掘捏造事件でも明らかになった。
 もちろんこの捏造事件の「犯人」はマスコミではない。また,以前から一部で指摘されていたと言われる旧石器の発見に対する疑問を取り上げていないことを後から責めるのも酷というものだろう。しかし,論文にすらまとめられていない発見を再三持ち上げるマスコミの煽りが,事件の当事者をますますのっぴきならない立場にまで押し上げていったであろうこともまた否めない。

 この事件は,マスコミ報道についてさまざまな教訓を示しているように思われる。その一つ,「専門家の言うことは正しいのか」という点について少し考えてみよう。

 『誤報 ─新聞報道の死角─』には,1990年5月の朝日新聞夕刊トップの「高校生コンピューター・ウイルス事件」が取り上げられている。
 その年の4月,S社製のパソコン用のゲームソフトにコンピュータウイルスが発見され,話題になったのだが,この誤報は,「香川県丸亀市に住む高校生がパソコン通信を通じて大手コンピュータメーカーの社員を名乗る人物からコンピュータウイルスの開発を持ちかけられ,金銭と引き換えにそれを渡した」というものだった。朝日新聞はスクープとして夕刊1面トップに掲載したが,記事を読んだだけで首をかしげるような奇妙な内容である。

 まず,従業員4万人の大手コンピュータメーカー(暗にF社を示している)の社員が名刺を渡して一介の高校生にコンピュータウイルスの開発を依頼した……この時点でもう目にハテナマークが湧く。悪巧みをするのにわざわざ名刺を出すのも妙な話だし,そもそも4万人をかかえるコンピュータメーカーの技術力をかんがみれば,地方の高校生にウイルス開発を依頼する説明がつかない。ウイルス開発に40人がかりというのもプログラミングの工程について「わかっていない」印象である。
 さらに,その事実を突き止めたというのが,大阪のコンピュータ連盟の会長ということになっていたが……この人物がパーソナルコンピュータ業界でどういう位置付けにあるかは,詳しい者数人に尋ねればすぐにわかったはずなのである。

 詳しくは触れないが,結局,この報道は以前から虚言癖のあった高校生の言葉を新聞社が真に受けたための失態として決着を見る。果たしてそれだけだったろうか。
 『誤報 ─新聞報道の死角─』は誤報の原因として記者のあせりや判断ミスをあれこれ挙げているが,先の人物からの情報を真に受けた段階ですでに敗北は決まっていたのである。おそらく「コンピュータ」「連盟」「会長」といった肩書きに目をくらまされたのだろうが,この人物の情報に基づいて記事を作成するのは,小泉純一郎の出馬の意思を確認するのに小泉今日子に電話するくらい(馬鹿馬鹿しい例で申し訳ないが本当にそのくらい)頓珍漢なのだ。

 そんな剣呑なことをしてしまうほど朝日新聞はパーソナルコンピュータ業界に疎いのだろうか。どうも,少々疎いようなのである。

(つづく)

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