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2000/11/05

本の中の強い女,弱い女 その十一 『谷仮面』 柴田ヨクサル / 白泉社

Nimg2191【とんとんのぼっていきたいのにな!!!】

 『エアマスター』のカバーには,「柴田ヨクサルのコミックス」として『谷仮面』なる作品が同じ白泉社から全12巻で好評発売中と記されています。サイズがA5版。これは文庫の倍の大きさで,マンガの単行本としては高価なほうと予測されます。しかも,12冊。
 烏丸は『エアマスター』すら親しい知人に教えてもらったくらいで,『谷仮面』は一度も見たことがありません。ぜひとも読んでみたい。しかし高そう。知人もこちらは知らないと言う。気になる。

 ところが,柴田ヨクサルのファンサイトなどを見てみても,この『谷仮面』の正体がよくわからないのです。ジャンルすら,はっきりしない。「エアマスターと谷仮面,どっちが強いかな」というファンの発言からすると,やはり格闘モノなんでしょうか。しかも困ったことに,そもそもそれほどたくさん印刷されなかったため,ほとんど本屋で見られない,古本屋でも見かけない,というのです。

 そんなある日,烏丸が都内の書店を散策していると……なんということでしょう,そこにはファンすらなかなか見つけられないと嘆く『谷仮面』全12巻がそろっているではありませんか。やるな,秋葉原書泉ブックタワー。
 ところで,この烏丸とて普通は,そんな得体の知れないマンガを一気買いしたりしません。とりあえず1,2冊買って様子を見るのが常道でしょう。しかし,問題は,それが入手困難という噂。もしここで1冊買って,面白くて,続きを買おうとしてもう二度と手に入らなかったら……マイナーコミック作品にはそういうことが少なくないのです。えーいっ。書泉ブックタワーの屋上から飛び降りるつもりで,12巻をどんとレジに運んだ烏丸。吉と出るか凶と出るか。
 ちなみに,その次の週,別の用事で書泉ブックタワーにおもむくと,そこには烏丸が全部買ったはずの12巻がそろって……入手困難の噂は何だったのか。

 さて,作品です。1巻読んで,「はてな?」
 主人公は,鳥山高校に通う高校生,谷。彼はなぜか添付画像のような仮面をかぶっています。が,その理由は別に説明されず,周囲も別に彼を特殊扱いせず,淡々と彼をめぐる高校生活が描かれます。彼は細身ながら,腕力は非常に強いようです。が,その理由もとくに説明されません。彼は島リホコというバレー部の女の子が大好きなのですが,とても口に出して言えません。
 2巻読んで,「それで?」
 作者はギャグを書いているつもりなんでしょうか。カバーの惹句は「超過激アクションギャグ」ですが,よくわからない。とくに笑うような内容ではないのです。授業中にいびきが聞こえるので先生がチョークを投げたら,寝ているのは谷の後ろの生徒だった,とか,リホコさんの気をひくために不良たちをぶっとばしたけどリホコさんは気がつかずに向こうに行ってしまったとか,そんな話ばかり。
 3巻読んで,「8,000円。いい勉強だったぜ」

 しかし,5巻で登場した中岡という鳥山高校伝説の不良とやらが休学から復帰してきて仲間を集め,不良校統一をはかろうと言い出し,まずはレスリング大会に出場しようというあたりから俄然話が動き出し……。

 ……気がつけば11巻,12巻では最初はキツネのようにとんがってぎくしゃくしていたリホコの顔もふっくら豊かになり,物語はコミック史上『めぞん一刻』以上のスーパーデリシャス遊星ゴールデンスペシャルリザーブゴージャスパワフル純愛ラブストーリーになってしまうのでした。ああ,びっくりした。

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