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2000/11/23

烏丸のそれはちょっといやだ その4 『悪魔学大全』 酒井 潔 / 桃源社

Nimg2503【我国魔道研究の先達】

 唐沢俊一『トンデモ美少年の世界』において「昭和50年代に復刊されたらしいが、澁澤龍彦が解説を書いているおかげでめちゃくちゃ高いらしい」と紹介された問題の1冊,それが添付画像の『悪魔学大全』である。
 なぜそんな本が烏丸の本棚にあったかは聞かないでほしい……実はどこで手に入れたか覚えていないのだ。

 ともかく物凄い本であることは確かだ。本書は昭和4年発行の『愛の魔術』第六部と昭和6年の『降霊魔術』全章,さらに著者の個人雑誌「談奇」から4篇を加えてまとめたものである。つまりざっと70年前に書かれたものだ。その博覧強記ぶりには恐れ入るばかり。しかもこのような本を書いているだけで警察にマークされた時代である。

 目次に目を通してみよう。
  淫魔
  黒弥撒
  Sabbat(悪魔の夜宴)
  魔術に対する処刑
  奢覇都 黒弥撒 淫鬼魔
  降霊魔術
  妖幻夜譚
  天狗雑考
  草木 動物 金石の魔法
  護符呪法
  占星術
  聖天秘話
  錬金術
  論考集(沙翁劇に現れた魔薬毒薬の研究・人造人間第一世ドロズの自動人形・ラヴァル元帥嬰児の血を持って淫惨なる悪魔の弥撒を修する事・南方先生訪問記)

 黒弥撒は黒ミサ,奢覇都はサバト,ラヴァル元帥とはジル・ド・レー候,南方先生は言うまでもなく南方熊楠である。
 解説で澁澤龍彦も書いているが「天狗雑考」が含まれているのがなんとも言えない。第一章「淫魔」を見ても,インキュブス(女性のベッドに現れ夜な夜な悪さをする悪魔)だけでなく,もちろんその例も多々紹介されているが,中国の『聊斎志異』から読み下し文を延々と引用したりと,それは素晴らしい素材の厚み,衒学の極みといった感触である。ただ,著者が猟奇的ディレッタンティズムに満足しているところを澁澤は「あえて酷なことを言えば,この書物の時代的限界があったのであろう」と書いている。まったく,あのディレッタント澁澤にそう言われてはかたなしだ。

 少し詳しく内容を見てみよう。
 たとえば基督に対して普通のミサがあるように,悪魔に対しては黒ミサを行う。通常のミサの裏返しだから,若く美しい女が聖壇に全裸で横たわり,その腹の上に聖餐杯を置き,胸に十字架を置き,その上で子供の喉を掻き切ってほとばしる血潮を聖餐杯にそそぎ悪魔の名を唱える。後は黒司祭が壇上の女性と×××……無茶苦茶である。
 こういったいかにも悪魔学な内容が(実際はもっとずっと詳細に)紹介される一方,古今東西の様々な妖術についても紹介される。たとえば,

  駱駝の血を呑んだ人は狂人になり,ランプの火にその血を注ぐと,其の場に居合せた全部の人の頭が,皆駱駝の頭に見える。

  水晶は,太陽の光線を取って,物を焼く事が出来る。其の粉末を蜜と共に呑めば,乳がよく出る様になる。

 他の章では,聖天(ガネーシャ。オウム真理教が冠った象の帽子でも知られている)の像を作る際に注意すべきことが細かく紹介されている。

  四,鼻はフクフクと大きく作ること。貧相に作ってはならぬ。
  七,牙は短いのがよろしい。長いと物にかかるおそれがある。

ご親切なことだ。

 さすが,唐沢俊一が「めちゃくちゃ高い」と書いただけあるまことに重厚な書物ではあるが,新妻千秋とチリ鍋をつつき合うために稀覯本を売っ払うのもまた一興。さっそく古本屋サイトで本書の実売価格を調べてみた。何万円,いや何十万か……わくわく。

  4,000円

 ……それはちょっといやだ。

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