[雑談] レディスコミックについて
ある作品を取り上げるのにそのマンガ家のポジションをまとめようとしたら,レディスコミックについて二,三書いておかないと進めなくなってしまった。
さりとて「レディスコミックにはちょっとうるさいわよ」と教えてくれる知人もおらず,どうも全貌も詳細もよくわからないのだ。烏丸にとって未開の大陸である。したがって以下に述べることは,非常に少ないデータに基づいた,一種,情報の捏造にあたるかもしれない。前もってお断りしておく。
さて。いくら未開のレディスコミックとはいえ,コンビニの店頭でながめれば,2つの大陸があることくらいはすぐわかる。すなわち,「エロ」主流と,そうでないものだ(正しくは「ミステリー,ホラー」系との3つに分けるべきかもしれないが,「ミステリー,ホラー」系も「エロ」ありとなしに分かれてややこしいのでとりあえずおく)。
そもそもは「エロ」なしのものが先行し,少女マンガを卒業した女性マンガファンを取り込もうとした,それがレディスコミックの起源である。集英社の「YOU」や講談社の「BE・LOVE」などがこれにあたる。これらのヒロインはOLあるいは主婦,つまりは読者の投影で,彼女たちは仕事や男性との交際の中でこつこつ自分なりの道を求め,最後には自信に満ちた明るい笑顔にいたる。深見じゅん『悪女(わる)』はその典型といえるだろう。
もう一方,「エロ」のほうだが,よく言われるのが「外人カップルの写真が表紙のものは,エグい」ということである。確かにエグい。男性誌ならマニア誌と呼ばれ,通常の書店では扱ってないか,ビニール掛けされておかしくないような,SM,レイプ,3P,スワップ,器物,獣姦,なんでもありである。女性に対して夢見がちな独身男性諸氏は,手にとらないほうが身のためだろう。ぐろい。
また,「エロ」系のチープな雑誌では,一度掲載された作品をそのまま再掲載し,新作のように表紙にうたうことが少なくない。雑誌にこだわる定期購読者はいないのだろうか。いずれにしても,恐るべき世界ではある。
レディスコミックの作家は,もともと少女マンガの作家だったものがシフトして量産するケースが多い。
たとえば井出知香恵。「エロ」系,非「エロ」系,何でもこいの凄い作家だが,もともとは1960年代に「りぼん」の『ビバ!バレーボール』でデビューした作家である。そのときから絵柄が変わっていないのが凄い。今にして思えば,(以前にも書いたようにボーイフレンドが死に,自身も子宮を摘出されるなど,女性であることを捨てて名選手になっていく)『アタックno.1』,少女の次に女になることをすっとばしておばさん的雰囲気だった『サインはV!』の2作のブームを受けて現れながら,『ビバ!』には,どこか隠微な,女の匂いのようなものが感じられた。身長や筋肉まかせでない,ねっとりしたきしみのようなものがあの作品にはあった。今,「エロ」系としては逆に淡白な彼女の絵柄を見ると,作家の変遷の不思議を感じないでもない。
ところで,レディスコミックのエグさについては,駅売りの夕刊紙がときどき話題にして教えてくれる。しかし,そりゃあ凄そうだと単行本を手にして,得した気分になることはまずない。所詮,男子禁制の世界,ということだろうか。
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