エログロのイマイチ 『中国残酷物語』 山口 椿 / 幻冬舎アウトロー文庫
【モアのテーマ】
これも「イチオシ」でなく,「イマイチ」。
「中国」「残酷」おまけに「掌編集」とくればこの烏丸,三度のメシよりウラメシヤ,まこと胸ときめく組み合わせなのだが,ダメ。萎える。
作者は作家,画家,チェリストという多彩な顔を持つアーティスト,1931年生まれというからけっこう年配である。最近各社から文庫で再販の続くその著作,ポルノなのにポルノという言葉では語り切れない,という扱い。おお,それは凄そう! と反応するにはこちらもいい加減スレてしまった。「あー,ポルノとしてはおっ立たず,奇譚文学としてはエロがくどい,あのあたりかな?」
あのあたりなんである。
内容紹介は掌編がたくさんあって面倒なので,表紙カバーから。
「秘密の花園で,美女の死体を肥やしにあでやかな百花を育てる男」「妻と弟の仲を疑い,弟の両手を切断,妻を生きながら壁にぬりこめた男」「憎い側室の手足を切り,鼻を削ぎ,耳を焼き,糞だめの中に放りこんだ皇后」……壮大な中国の歴史を舞台に語られる,この世で最も残忍残酷な拷問・復讐・惨殺・処刑の数々。人間はやはり悪魔だったのか。
よい素材である。これだけの素材でわくわくさせないなら,それは書き手の責任だ。しかし,この山口椿の描くポルノは,描かれるセックス行為が倒錯的なわりに電車の中で読めてしまう。要するにフランス書院文庫の隠微,グリーンドア文庫の羞恥,マドンナメイトの可憐(笑),いずれにも至っていない。しいていえば富士見ロマン文庫翻訳シリーズの高踏に近い。マグネシウム成分のない食塩のように,猥雑の雑が足りないのである。
しかも,本作は中国を舞台にしながら,漢文からゆえの重さ,キレのよさがない。和モノ,ひらがなの粘着質から逃れられないとでもいうか,たとえば『半七捕物帳』の岡本綺堂が『中国怪奇小説集』(光文社文庫)を書けば,ちゃんと中国の怪奇譚ならではの手応え読み応えがあるというのに,それがない。
もちろん,それならそれで,山口製和モノ怪奇譚として読めばよいわけだが,掌編が35編も並ぶとそのウェットさにうんざりしてくる。多分,残虐な行為の一つひとつを書きながら,著者がビビッドに反応しすぎているのだろう。
幼稚園年長の折りより親にせがんでヤコペッティのモンド映画を見にいっていた烏丸のワンポイントレッスン。残酷物語はリアルに淡々と書かれたほうがいいですね。
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