[雑談] マンガ界の謎 その2
【朝日ソノラマ「サンコミックス」の謎】
続けて取り上げたいマンガ界の謎,それは朝日ソノラマという会社である。
もともとは1959年にソノシート(赤や青のビニール製の薄いアナログレコードで,アニメの主題歌などがよくこれで販売された)付きの出版物で名をあげた会社だった。「マンガ少年」「ハロウィン」「ネムキ」などの雑誌もある。
「サンコミックス」はその朝日ソノラマのマンガ単行本のラインナップで,たとえば我が家の本棚に見つかるものだけでもざっと以下の通り。
ジョージ秋山『アシュラ』『デロリンマン』
あすなひろし『哀しい人々』『ぼくのとうちゃん』『白い星座』
山上たつひこ『光る風』
石森章太郎 『竜神沼』『佐武と市捕物控』
楳図かずお 『紅グモ』『笑い仮面』『半魚人』『猫目小僧』
永島慎二 『漫画家残酷物語』
真崎守 『ジロがゆく』
御厨さと美 『NORA』『ケンタウロスの伝説』
矢代まさこ 『ノアとシャボン玉』『ボクはイヌになった』『シークレット・ラブ』
水野英子 『ファイヤー!』
山岸凉子 『ハーピー』『天人唐草』『ティンカー・ベル』『メデュウサ』
樹村みのり 『ピクニック』『雨』『Flight』
岡田史子 『ガラス玉』『ほんのすこしの水』『ダンス・パーティー』
大島弓子 『誕生!』『ポーラの涙ペールの涙』『ミモザ館でつかまえて』『野イバラ荘園』『F式蘭丸』『いちご物語』
倉田江美 『ドーバー越えて』『宇宙を作るオトコ』
山田ミネ子 『ひとりっ子の冬』
伊藤愛子 『ハピィ・トォク』
坂田靖子 『闇夜の本』『星食い』
猫十字社 『黒のもんもん組 富士山麓に玉砕編』
先に取り上げた秋田書店のサンデーコミックスに比べればややマイナーだが,マンガ史上,強烈なインパクトを残した作品が少なくない。にもかかわらず,すべて絶版である。1冊も残っていない。
驚くべきことは,これらの作品の掲載雑誌がまったくまちまちであること(出版社も講談社,小学館,集英社とてんでばらばら),ここに挙げた作品の大半が,サンコミックス版が絶版になって以来ずっと入手不能か,入手できるとしても朝日ソノラマ以外の出版社からの刊行であるということだ。
つまり,朝日ソノラマは,あらゆる出版社のあらゆる雑誌に掲載された作品を単行本化するだけのとんでもないコネクションと企画力を持ち合わせながら,さほど増刷を重ねず,あっさり絶版にして省みないのである。
これは,出版社の経営理念としては,いちおうスジの通ったことではある。あまり知られていないが,出版社の経営を最も圧迫するのは返本と在庫の管理費であり,主力雑誌の返本率が20%ならビルが建つが,50%なら会社がつぶれる,という例だってある(ちなみに,返品率が70%を越える雑誌も別に珍しくはない)。
朝日ソノラマは,刷り部数をタイトに削ることによって返本,在庫を極力抑える,なみなみならぬ強固な保守意識を持っているということになる。そのくせ,この攻撃的なラインナップ。……なんだろう,この異様なバランス感覚。正直,よくわからん。
朝日ソノラマの倉庫か会議室に過去の出版物がすべて置いてあるなら,有料でよいから半年ばかりこもりたい,とは,烏丸の嘘いつわりのない心からの願いの1つなのである。
« [雑談] マンガ界の謎 その1 | トップページ | [雑談] マンガ界の謎 その1' »
「コミック(評論等)」カテゴリの記事
- 大ゴマの魅力 「インビンシブル」「ハコヅメ」など(2022.04.14)
- 『現代マンガ選集 異形の未来』に見るマンガ軽視(2022.03.31)
- まさかの 『すこし昔の恋のお話』 笹生那美 / イースト・プレス(2022.03.07)
- 人生は一度きり 『薔薇はシュラバで生まれる 【70年代少女漫画アシスタント奮闘記】』 笹生那実 / イースト・プレス(2021.05.31)
- 萩尾望都をめぐる雑感 その5 目をつむり、耳をふさぐ(2021.05.27)


コメント