マンガ家の最終回シリーズ 『Yasuji東京』 杉浦日向子 / 筑摩書房(ちくま文庫)
【「江戸」はあんただけのモノじゃない】
出かけた先の本屋で文庫の棚を見ていたら,ちくま文庫から杉浦日向子の短編集が出ていた。3月の発行らしい。小さな本屋だけうろうろしていると,こういう見逃しがあっていけない。ちくま文庫まで常備するとなると,ある程度の広さはいるのよ。
それはともかく,この『Yasuji東京』,江戸末から明治の画人・井上安治を題材にした連載短編を中心に,単行本未収録作品を……ちょと待てえ。
この中に「鏡斎まいる」という江戸期の術士を描いた短編の(1)(2)(3)が収録されているのだが……そのうち,(1)と(2)は,なんと同じちくま文庫の『ニッポニア・ニッポン』という杉浦日向子の短編集にすでに収録されているのだ。なんだそりゃ。
オムニバス(「江戸マンガコレクション」とかね)と作家別短編集の両方に収録,ってのなら,よくあることだし,まだわかる。でも,同じちくま文庫,同じ杉浦日向子の本だぞ。「単行本未収録」という帯のアオリを真に受けて買う奴なら,『ニッポニア・ニッポン』だって持っていそうなもんだろう。実際烏丸は持っている。
百歩譲って,「鏡斎まいる」の(3)が単行本未収録だったのでぜひとも文庫収録したい,しかし(1)(2)がないと設定がわからんだろう,というサービスだとして……江戸時代の仙人みたいな術士の幻術話,それも読み切り短編マンガに,設定なんているかあ! どっちが先でもいいよな話ばかりじゃないか!
(実際,鏡斎は(1)で仕官を辞めたことになっているのに(2)(3)は仕官中の話だし,そもそも(1)(2)(3)とも初出雑誌が違い,順序は明らかにどうでもよい)
しかも,この「鏡斎まいる」の(3),初出が「ASUKA 号数不明」となっている。
言うにことかいて,「号数不明」とは何だ。呆けた作者が忘れていたって,編集者が角川書店に頭下げて調べてもらえばわかることだろう。角川に頼みにくければ,早稲田鶴巻町の「現代マンガ図書館」で調べる手だってある。たかがそれだけの手間を惜しんで,エラそうに初出一覧で1ページ取るんじゃない! わからんならASUKAの切り抜き持っている烏丸が教えてやろう,1986年5月号だ。
なんにしても,マンガ家やめてから異様に傲慢,非常に不快なエッセイ仕事の多い杉浦日向子,なんなんだこいつわ。
『合葬』や『百日紅』を烏丸は作品としていまだ高く評価しているが,杉浦がマンガを描かなくなったのをこれ以上惜しんだり謎扱いしたりしてやる必要はない。一ノ関圭『らんぷの下』『茶箱広重』の書評でも述べた通り,描かないでいられる作家には,描かないですむほどのモノしか残ってはいないのだ。
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