Rare! 『蛾』 ロザリンド・アッシュ,工藤政司 訳 / サンリオ(サンリオSF文庫)
不肖この烏丸,本好きながらコレクターとうそぶけるほどでなく,珍本・稀本,初版・サイン本のたぐいを求めて神保町界隈を散策する域には至っていない。そんな烏丸の凡庸極まりない本棚だが,それでも永年本の虫をやっていれば珍本と目される本の1冊2冊は向こうからやってくる。
ロザリンド・アッシュの『蛾』は今は亡き──もっとカゴ一杯買っておくのだったと日本中のSFファン,ミステリマニアを泣かせた──かのサンリオSF文庫中の1冊。サンリオSF文庫については書きたいことのなくもないが,今はさておき,この『蛾』である。内容そのものは,いわゆる1つのゴシックホラーとしか言いようのないもの。映画化の話は寡聞にして聞かないが,あってもなんら不思議のない。それより本書巻末に添付されている自社の文庫本を広告する解説目録,これがいやもう,もの凄い。
そこにはモルデカイ・ロシュワルトの『レベル・セブン』,ケイト・ウイルヘルムの『カイン市』にはさまれてレイ・ブラッドベリの『万華鏡』一巻が紹介されているのだが,なんとその著者たるや
レイ・ブラッドベリ 川本三郎=誤訳
となっているのである。「誤訳」!
故意か偶然か小さな漢字1文字(*1)。たかが誤植,されど誤訳。このページを担当した編集者のあとさきの心持ちをおもんばかるだに,底知れず味わい深い誤植中の誤植,名品といえよう。
ちなみにこの解説目録部,書店店頭に置かれた折りには数センチの(正しく?印刷された)紙が上からペイパアセメントで貼り付けてあった。もし古書店などで首尾よく本書を入手できた暁には無理やりはがそうとせず,ソルベックスなど用いそっと優しく引っぱがしてやることを強くお奨めしたい。
*1……版下業務にかかわった経験のある方なら,写植オペレーターがうっかり誤字を入力したことに気づいたのち,正しい文字を近隣にバラ打ちする場合があることをご存知だろう。
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【誤爆】
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