フォト
無料ブログはココログ

« 本の少々 | トップページ | 《甘え》に支配された幼児的な世界 『ストーカーの心理学』 福島 章 / PHP研究所(PHP新書) »

2000/08/08

『人はなぜストーカーになるのか』 岩下久美子 / 小学館

Nimg904 【悪いのはあの女のほうなんだ】

 Bは自社製品の広報に雑誌社を訪ねてAと知り合い,一度だけ昼食を一緒にしたことがある。

A「昨日は楽しかった。過去なんか振り返らず,もっと前向きに生きたほうがいいと思うよ」
B「そうですね。昨夜も一人になるとうっかり泣いてしまいました。Aさんにいろいろ聞いてもらって,ずいぶん気が楽になりました」
A「僕はAさんさえよければいい。言ってくれればいつでもどこへでも飛んでいくから」
B「お忙しいでしょうに,こんなに毎日慰めのメールをありがとう。もう当分男の人を好きになったりしないと思うけど,これからもよい友達でいてくださいね」
A「それでいつにしよう,君のご両親に挨拶にいくのは」
B「両親は,郷里で元気にしてますけど?」

 自分がどんな地雷を踏んでしまったのかにBが気がついたのは,このメールのやり取りからもう少し後のこと。これは1996年の出来事だが,AもBも勤めていた会社を辞めており,今はどこにいるのかは知らない。

 昔も,もちろん色恋にまつわる「つきまとい」行為はあった。ふられた女の家に毎晩無言電話を掛ける男はいたし,別れた男の行く先々に現れ,新しい恋や結婚を邪魔して歩いた女も知っている。しかし彼らは,相手が自分を疎ましく思っていることを知っており,その上で「いやがらせ」をしている,しかしやめられない,という自意識は持っていたように思う。
 しかし,最初に紹介したAの雰囲気は,それらとは少し違う。彼はどこまでも善意のつもりだし,自分がBを愛し,Bも自分を愛し,自分を必要としていることになんら疑いを持っていない。少なくとも彼の言動はそのような認識の上に立っており,先のメールの数々は彼が「ようやく自分にも恋人ができた」と知人に見せびらかしたものだった。ただし,Bとの付き合い(?)について彼がオープンだったのはこの頃まで,その後は自分に都合のよい偽情報ばかり撒き散らすようになり,一方,BはAからの際限ないメールや電話にどんどん追い詰められていったらしい(Bとは直接の面識がなかったため,そのあたりはつまびらかでない。僕たちが大まかないきさつを知ったのはBが退職した後、Bの仕事を引き継いだ新しい担当者からだった)。

 本書『人はなぜストーカーになるのか』は,ある種の人々が,相手に一方的かつ病的な執着を寄せて追い掛け回し,相手の気持ちを全く無視して支配しようとする行為をストーキングと定義し,それが被害者にどれほどのダメージを与えるか,どう対処すべきか,さらには現実に被害があるにもかかわらず「被害妄想だろう」「被害者の側になんらかの落ち度があったに違いない」とする考え方が被害者を余計に追い詰めることを訴える。
 1997年8月の発行ということもあり,内容は実によくまとまっているものの,3年経った現在から見れば若干穏やかという気さえする。この3年の間には,桶川の女子大生殺人事件や西尾の女子高生殺人事件など,いわゆる「ストーカー殺人事件」が相次ぎ,新潟の女児監禁のように形態こそ別ものだが,精神的に通底する事件も多発している。

 本書などによる啓蒙がきっかけとなり,1998年2月にNTTがナンバー・ディスプレイサービスを導入,また,2000年5月には「ストーカー行為等の規制等に関する法律」公布。社会はストーカーによる犯罪をそれと認識し,対処する方向に向かっている。
 しかし,「ストーカー」「アダルト・チルドレン」「平気でうそをつく人たち」「EQ」など,キーワードは異なれど,病的なまでに身勝手,自己中心的な「大人」が増えているという実情そのものにはなんら手が打てていないというのが実情だろう。そして,それ以外の面では病的でなく,むしろ頭のいいストーカーたちにとって……ああいけない,もう彼女に電話する時間だ。

« 本の少々 | トップページ | 《甘え》に支配された幼児的な世界 『ストーカーの心理学』 福島 章 / PHP研究所(PHP新書) »

心理・教育・宗教」カテゴリの記事

コメント

そうですね。病的ですからね、異常な執拗さと執着心たターゲットを管理支配せずにはいられない、それを楽しいと笑顔でアピールするのだから、奇妙で余計に残酷な人間たちに見えます。嫌がらせ目的の本当に執拗な人間は言わずもがな、ですが、善意での関係性強要支配タイプも厄介ですね、ぼくが君には必要、私があなたには必要なんて勘違いと思い込みも激しく、関わりたくない、という本人の意思表示に逆切れ、また執拗さを強めます。もう、ああいう輩は、治療不可能。ターゲットの周りにも、攻撃しかねない、厄介な異常人間ですわ。新興宗教患者に多い、頷けますね、私は13年執拗に監視干渉されて長いですが。結婚せず一生独身貫くと誓いましたね、後悔ありません。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/547008/46341194

この記事へのトラックバック一覧です: 『人はなぜストーカーになるのか』 岩下久美子 / 小学館:

« 本の少々 | トップページ | 《甘え》に支配された幼児的な世界 『ストーカーの心理学』 福島 章 / PHP研究所(PHP新書) »