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2000/08/10

まだまだ 『誤植読本』 高橋輝次 編著 / 東京書籍

Nimg905 【アラブゼミ】

 先ほど紹介した『蛾』は巻末の誤植がウリだが(そうか?),こちらは1冊まるごと誤植をテーマにした本……と思って買ってしまったが,あいにく「誤植」そのものについては全体の2割か3割程度で,さすが教科書会社,どちらかというとこれは出版の現場での「校正」苦労譚についての古今の随筆を集めたものという趣である。
 要するに,残念ながら帯に「ここだけの恥ずかしい話しに思わずニヤリ。失敗は成功の墓。この本でしか味わえないあの作家達の告白」とうたわれているほどには笑えない。確かに妙な誤植を出して青恥赤っ恥,という話もなくはないが,むしろ「原稿には間違いないよう書いたつもりなのにベテランの校正者に指摘され毎度赤面」「苦心の作語を校正で勝手に直されて不本意」「漱石の全集を校正したときはこんなことに苦労」といった,まあ古風というか純文学的というか。「同じトクトミ兄弟でも、兄の蘇峰は徳富と点あり、弟の蘆花は徳冨と点なし、それぐらいのことなら、たいがいのものがわきまえて」いる読者を想定しているということである。唐沢兄弟のどちらが原作でどちらが作画か,という読者はあんまりお呼びでない。
 であるから,本書を購入する際には,帯や目次で著者一覧に目を通してからのほうがよいだろう。

 と,これだけでは面白くもなんともないので,この烏丸が出合った誤植について一つだけご紹介しよう。
 以前担当したある雑誌記事に,「アブラムシと共存するアリマキ」という表現があった。どういう内容の文章だったかはもう思い出せない。ともかくその「アブラムシ」である。これが,初校のゲラ(校正刷り)では,なぜか「アブラゼミ」となっていた。活字を組んだ(正確には写植だが)者の思い込みだろう。無造作に赤を入れ,訂正した。すると,何をどう勘違いされたのか,再校では「アラブムシ」になってしまった。なんとも楽しい言葉だが,笑って通すわけにはいかない。赤を入れ,その折に訂正はほとんどそれだけだったので少し考えて責了ということにした。刷り上がったものは,「アラブゼミと共存するアリマキ」。
 ……その写植オペレーターは「アブラムシ」という言葉に,何かよっぽどつらい思い出でもあったのだろうか?

 パソコン,ワープロが普及した昨今では,手書きでは考えられない誤植も頻発する。「以外」と「意外」,「内蔵」と「内臓」の混同など,インターネットの掲示板では日常茶飯事。ついでに「敷居が高い」「役不足」なども使い方には要注意だ。

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