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2000/08/08

《甘え》に支配された幼児的な世界 『ストーカーの心理学』 福島 章 / PHP研究所(PHP新書)

Nimg895  ストーカーについて,もう1冊。
 著者は精神医学博士。東京医科歯科大学助教授を経て,現在上智大学教授。病跡学の権威として知られるほか,精神鑑定医として多くの経験を持つ。

 おりしも米俳優ブラッド・ピットの邸宅に不法侵入して有罪判決を受けた女性ストーカーが,カウンセリングの成果を報告する審理を欠席,行方をくらましたと言う。ブラッドは女優ジェニファー・アニストンと7月29日に結婚式を挙げたばかり。この女性ストーカーの次の行動が注目される。

 福島章氏によれば,ストーカーはその行為類型から5つに分類される。
1.イノセント・タイプ
2.挫折愛タイプ
3.破婚タイプ
4.スター・ストーカー
5.エグゼクティブ・ストーカー
 ブラッド・ピッドにつきまとうアシーナ・マリー・ローランド(21歳)は明らかに4.のスター・ストーカーだが,それでは彼女は精神病理的にはいかなる状態にあるのだろうか。
 福島氏は,行為類型や《加害者=被害者関係》による分類だけでなく,ストーカーの心理的状態に焦点を当てた分類を試みる。
1.精神病系
2.パラノイド系
3.ボーダーライン系
4.ナルシスト系
5.サイコパス系
(アシーナがいずれに含まれるかは,烏丸にはデータ不足で不明)

 さて,このように本『ストーカーの心理学』は,先に紹介した岩下久美子の『人はなぜストーカーになるのか』に比べても,精神医学の専門家ならではの説得力溢れる分類や例証が丁寧に重ねられる。著者本人がエロトマニア(恋愛妄想)タイプの「エグゼクティブ・ストーカー」に追われた経験があり,それが随所で説得力をいやます要因ともなっている。また,ストーキングにいたる心理の全貌は明らかになっていないものの,背景として,乳児的完全依存から相手への攻撃に至る人間としての未熟さがある,という解説もわかりやすい。

 本書を読みながら痛感したのは,いかに注意しているつもりでも,人は常に思い込みにとらわれがちだということ。
 たとえば上記の如くストーカーを行動類型から5つ,精神病理的に5つと分類されると,ついついその5つのタイプが必ずおり,それぞれそれなりに多く,しかも最初に書かれたほう(3.よりは2.,2.よりは1.)が多いようになんとなく想像してしまう。そもそも,マスコミがこれだけストーカーという言葉を連発する以上,ストーキングやストーカー殺人が増えているに違いない……。
 しかし,本書では,数字的な裏付けがないためそれらは何とも言えない,と注意を喚起している。しかもこの数十年,日本国内の殺人事件は激減し,さらに社会病理現象そのものが──終戦直後に生まれた現在50歳代の世代をピークに──減ってきていると指摘する。とかく問題にされがちな最近の若い世代が,実は「集団として見ると,社会病理現象・問題行動にあまりかかわることの少ない,《やさしい》《おとなしい》《情緒的に安定した》《非攻撃的な》世代」だというのである。

 こうして見ると「ストーカー」は,「セクシャル・ハラスメント」同様,従来から見られた行為について,社会の認識や生活パターンが変わり,大きく取り上げられるようになったという面も少なくないに違いない。
 いずれにせよ,「ストーカー行為等の規制等に関する法律」施行に伴ない,今後はストーキングについてもデータが充実してくるに違いない。その上でさらにじっくりと考えてみたいテーマではある。

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